ロマンス・投資詐欺「40~60代」被害“激増”… 警察も手を焼く悪組織「トクリュウ」“感情のジェットコースター”手口とは
世間の風潮を巧みに利用し、感情のジェットコースターに乗せるトクリュウ
こうした社会の風潮を利用し悪事を考えるのがトクリュウである。特殊詐欺のうち「もうかります詐欺」は、被害者の「あわよくばもうかりたい」という下心に付け込み詐欺を働く。高齢者を狙った「オレオレ詐欺」とは性質が異なる詐欺形態である。 被害者学的にみると、「オレオレ詐欺被害者」の高齢者は“完全な被害者”といえるが、「もうかります詐欺被害者」は“誘発的被害者”なのかもしれない。もうかりたいという動機から、自らの意思で、多額の現金を見ず知らずの人間に託しているからだ。 なぜ、SNS型投資詐欺やロマンス詐欺にだまされるのか不思議に思われる方も多いと思う。それは、筆者が特殊詐欺の元主犯格だった人から聞いたこと。すなわち、詐欺師は「感情のジェットコースター」を作るという手口であった。
最初は親切、意に反すると激高
投資に誘うトクリュウが生息しているのは、フェイスブックやインスタグラム、マッチングアプリ等である。以下では、筆者の「だまされたふり」実践例を抜粋してご紹介する。 【ケース1:筆者が経験した詐欺@マッチングアプリ】 女性「私、投資で生活してるの。いま、誰でもしていますよ。今度一緒にやりませんか。一から教えますから大丈夫ですよ」 筆者「へえ、投資やってんの。どのくらいもうかるのかな」 女性「まあ、日によって金額は違うけど、少なくとも1日100万円前後はいくよ」 (ここで、銀行残高の推移を示す写メを送ってくる) 筆者「すごいね。じゃ、機会があったら、リアルに会ってテクニックを教えてよ」 女性「うん、絶対やんなきゃ損だよ。教えてあげる」 (数日後) 女性「もうすぐ取引始まるから、一緒にやろう。ここにお金を預けて。私が教えるから、大丈夫」 筆者「いやいや、知らない人にお金を預けるってないでしょ」 女性「あなた! 一緒にやるって言ったじゃないの。だから、私は忙しいのに時間作ってんだよ(怒)」 筆者「事前に、リアルに会ってテクニック教えてとは言ったけど、投資をするとは言ってないよ。面識ない人に金を預けるのは、普通に考えておかしくない?」 【ケース2:筆者が経験したロマンス詐欺@フェイスブック】 女性「はじめまして。私は、国連の医師です。いま、中東のシリアに来ています。現地は、食料や薬が欠乏して悲惨な状況です。ここ数日、状況が悪くなりました。近いうちに、私も国外に脱出しなくてはいけませんが、荷物などが多いので心配です」 (数日後) 女性「今日、預けているお金を引き出しました。こちらは銀行が機能していませんから、荷物と一緒に輸送します。私は、日本人とのハーフですから、日本で病院を開業する予定です。そこで、お願いですが、私の荷物を預かってくれませんか。お礼は十分にします。ご迷惑はかけませんから、どうかお願いします」 筆者「そうですか。事情によってはお力にならないこともありません」 女性「あなたは本当に親切な人です。一刻の猶予もありません。住所を教えてください」 筆者「その前に、国連の身分証を写メでお送りいただけますか」 (数分後、国連職員〈UNHCR〉の顔写真付きIDが送られてきた) 筆者「いまからこのIDを、東京の南青山にある国連日本支部に確認します。確認が取れた上で、緊急避難的に荷物をお送りいただくか検討します」 女性「それは、止めてください。解雇されてしまう。あなたを信頼してお願いしているのよ! 一刻の猶予もないのが、分からないの(怒)」 筆者「そうなの。でも、荷物の中にご禁制の品が入ってたら、こっちがリスクじゃん。身元確認するか、荷物を断念するか、どっちか選んでね」