古巣対決で自身初のリーグ戦3連勝。湘南の山口智監督が感情あらわに「“這い上がってやりたい”という想いだけでやっている」
「個々が相手を見てプレーできるように」
「興奮しています」 湘南ベルマーレの山口智監督にとって、エモーショナルな白星だったのだろう。 【動画】畑大雅が殊勲の決勝弾! 7月20日に行なわれたJ1第24節。現役時代の大半に加え、コーチとしても苦楽をともにしたガンバ大阪のホーム・パナソニックスタジアム吹田で1-0の勝利。21年9月の指揮官就任後初のリーグ戦3連勝を飾った。 試合の立ち上がりから湘南がポゼッションで優位に立ち、左右に揺さぶりながら攻撃を仕掛ける。だが、リーグ最少失点を誇る相手の堅守をなかなか崩し切れず、0-0で試合を折り返す。 後半は相手の修正もあり、ボール保持の時間が若干減少。ただ、ロングボールも上手く交えながら相手の隙をうかがい続けると、83分に均衡を破る。自陣でのビルドアップから鈴木雄斗、池田昌生、田中聡、ルキアン、福田翔生とパスがつながり、最後は畑大雅が決め切る。この1点を最後まで守り切った。 試合後、山口監督が手応えを口にした。 「最近の試合で自分たちの良さを出せるようになって、ガンバさん相手にも出せるかどうかというなか、出し切ることを選手に求めて、準備もした。攻守において本当によくやってくれました。 ボールを保持するなかで、個々が相手を見てプレーできるようになってきたのは大きいです。守備でも、今までは後ろが準備できていなくても、ハイプレスをかけていた場面もあったと思いますが、“行く・行かない”の判断が良くなってきています。 あとは2トップの守備で、相手のアンカーやボランチへのパスコースの管理は口酸っぱく言っていて、フォワード自身が点を取れていないなかでも、守備の働きをずっとやってくれているので、すごく助かっています」 会見ではいつもクールに試合を振り返る山口監督も、この日ばかりは感情をあらわにしていたように見えた。やはりアウェーでの古巣対決で、自身がチームに浸透させてきたサッカーが表現された勝利に、感じ入るものもあるのだろう。 「順位(試合前の時点で18位)には責任を感じていますが、気にしすぎずに“何とか這い上がってやりたい”という想いだけでやっている。今日は2位のガンバさんでしたし、このスタジアムに思い入れもあります。チームの良い流れを何とか自分たちの方に転がらせたいゲームだったので、非常に嬉しい。何連勝できたか、というよりも、今日、流れのなかで壁を乗り越えられたところに喜びを感じています」 7月10日の天皇杯3回戦・東京ヴェルディ戦(1-0)も含めれば、公式戦4連勝中の湘南。また、その内、3つのゲームがクリーンシートだ。 シーズン前半戦は19試合中18試合で失点を喫したチームとは思えないほど守備が改善され、ゴールを取り切れるようになった湘南。次節のアビスパ福岡戦まで約2週間の中断を挟むなかで、その後も現在の勢いを維持できるかは、指揮官の手腕にかかっている。 取材・文●岩澤凪冴(サッカーダイジェスト編集部)