びわこ成蹊スポーツ大学で「日本野球学会第1回研究大会」開催される
野球の国際化~これからの野球×国際開発~
午後からは「十周年記念講演:野球の国際化~これからの野球×国際開発~」と題して、履正社高校女子野球部監督/侍ジャパン女子代表前監督の橘田恵氏、中京大学/中京大学女子ソフトボール部監督二瓶雄樹氏、アビームコンサルティング株式会社の横田直道氏が講演、座長を筑波大学准教授の川村卓氏が務めた。 橘田恵氏は、日本が女子野球で世界No.1であり、自分たちの勝利だけでなく、女子野球振興のために海外チームを受け入れたり、国際大会中に野球指導を行うなどの活動を紹介。競技の将来を担うためには競技レベルの向上、雇用の創出を行い、女子野球を「当たり前の文化」にすべきだと訴えた。 二瓶雄樹氏は、JICA大学連携事業で、アフリカに中京大学女子ソフトボール部員を伴ってソフトボールを通じた青少年育成活動を行った。場を清める(ゴミ拾い、グランド整備)、指導・実践、親善試合、交流という活動内容を紹介。そのうえで「強いニワトリがいなければ卵は生まれない」として、競技の強化と普及の両立を訴えた。 横田直道氏は、JICA野球指導者を経て読売ジャイアンツに入社、マーケティング業務を担当し、ニューヨークヤンキースにも出向。2022年からアビームコンサルティング株式会社に入社。1.野球はすでに国際化している2.野球は多様であり変化している3.全ては想い(ビジョン)から始まるとし、野球による国際化推進の重要性を説いた。
ポスター発表の充実ぶり
こうしたメイン会場での発表に加えて、日本野球学会では「一般研究発表」も行われた。通称「ポスター発表」。模造紙1枚のサイズに、1テーマでの研究発表を行う。 大学、一般企業の研究者、指導者などが研究発表をしている。今回は88ものテーマでの発表が行われた。 近年、目立つのが高校野球部による研究発表だ。今回は以下の18の発表が行われた。 ・倉敷翠松高校「変化球の球速と被打率の関係について」 ・広島県立祇園北高校「野村式ID野球を現代MLBデータ解析で再構築する」 ・広島県立祇園北高校、武田高校、加治佐平(東洋大学)「メンタルを科学する:試合に臨むための本当の準備」 ・岐阜県立大垣北高校「バスターの用いられ方の検討:一般的な打法と比較して」 ・岐阜県立大垣北高校「理想とするマネージャーの在り方について考える:北高野球部が甲子園に行くために」 ・岐阜県立大垣北高校「小学生の心身の発達と大垣北Jrベースボールラボ~活動のあるべき姿を考える」 ・山形県立山形東高校「高校野球におけるデータ収集とその活用事例」 ・鳥取県立米子東高校「高校野球における高めのストレートの有効性について」 ・鳥取県立米子東高校「球速帯の変化と打球方向のちらばりについて」 ・鳥取県立米子東高校「野球人口増加への取り組み:スポーツ少年団に着目して」 ・鳥取県立米子東高校「サウナには心理的競技能力を向上させる効果があるのか」 ・神奈川県立多摩高校「野球人口拡大に向けて、高校球児ができることは何か」 ・神奈川県立多摩高校「中学校部活動の地域移行が、高校野球人口に与える影響についての一考察」 ・神奈川県立多摩高校「二塁から本塁までの走路における二塁走者の最適なリードの位置はどこか:昨年度からの継続研究」 ・立花学園高校「交代した選手の所に打球は飛ぶのか」 ・立花学園高校「高校野球のマネージャーの仕事の現状とこれからの課題」 ・東邦高校「高校野球3年生における夏の県大会後の体型変化の年度別比較」 ・山梨県立甲府西高校「野球人口の減少と普及・発展に向けた取り組み」 88本の発表から、 ・北海道大学大学院「学童野球人口のチームマネジメントの成果と課題:札幌白石リトルリーグを事例として」 ・立命館大学大学院「野球のピッチングにおける様々な球種の回転効率と手部の姿勢との関係」 の2本が優秀賞に選ばれ ・筑波大学「国内一流野球選手の投球動作に関するキネマティクスの研究」 が最優秀賞に選ばれた。 また、 ・立花学園高校の「高校野球のマネージャーの仕事の現状とこれからの課題」 が奨励賞に選ばれた。 特に高校部門のポスター発表は近年増加し「野球研究の甲子園」のような活況ぶりだ。野球を学問研究としてとらえる動きがさらに盛んになってほしいと思う。