たどり着けるかは運次第!? 究極の秘湯・野湯探検記【vol.16 番外編】 難易度高すぎ!! 涙のリタイアを強いられた野湯たち
雪の谷底で転倒しあわや遭難寸前に……【たつ子の湯】
秋田県乳頭温泉郷の奥に、半世紀以上前に閉鎖された一本松温泉がある。跡地では現在もお湯は湧き続けている。「たつ子の湯」だ。 グリーンシーズンなら、初心者でも簡単にアクセスできる野湯だが、豪雪地帯の雪の野湯に憧れて、あえて2月の深雪の季節に野湯探索に向かった。メンバーは野湯仲間と、野湯も雪山も初体験となる彼の妻を連れての3人。2015年頃の話だ。 乳頭温泉郷の孫六温泉をスタートし、スノーシューで沢沿いの道らしき場所を登ってゆく。積雪が1m以上あるのでどこが道か定かではないのだ。 15分も進むと沢の対岸は、崖の至る所から噴煙が立ち昇る乳頭温泉郷の源泉地帯となる。その谷底に「先達川の湯」という野湯があるので、雪で覆われた崖を慎重に谷底まで降りて行った。 しかし、沢を渡る際に初心者の女性をサポートしていた時、凍りついた岩で足を滑らせ川の中に転倒してしまった。その際メガネを川の中に落としてしまい、しかも下流へどんどんと流されてゆく。ずぶ濡れになりながら川の中を走り、何とかメガネは確保したが、パンツの中までビショビショになり、氷点下の中で凍え上がった。 あまりの冷たさと寒さに、先達川の湯の探索どころではなくなり、とにかく私はクルマまで戻って着替えることにした。夫婦2人は無事だったので、先に「たつ子の湯」を目指してもらい、私は着替えてから彼らのトレースの後を追うことにした。大急ぎで雪山の二人のトレースを駆け足で登ってゆき、30分ほどで彼らに追いついた。 更に登り、急こう配の斜面を横歩きでトラバース。その先には先達川の支流と思われる深く落ち込んだ沢があった。 実は、その沢が先達川の本流で数100m上流が「たつ子の湯」だったのだが、その時点ではそうは気づかず。別の谷間を流れる沢までわざわざ移動してそこを上流へ向かい始めた。 すると周辺から硫黄臭が漂ってきたため、この先で間違いない! と確信してしまった。スマホなどでの現在地確認をすることもなく、硫黄の香りのする谷をどんどんと登って行く。しかし登っても登っても「たつ子の湯」らしき野湯は発見できない……。 いい加減におかしいと思って初めて、仲間がスマホのGPS機能で現在地を確認。すると野湯のある谷とは違った谷の奥深くまで入り込んでいることが分かった。時間は15時を回っていた。冬場で日も短い。残念だったが引き返すことにした。 日没が迫っていたのでショートカットルートを選んだが、これがまた川に阻まれてなかなか進めない。クルマに辿り着いた頃には辺りは暗闇。あやうく雪山で凍死してしまうところだった……。