「人より猫が多い島」石巻・田代島で大きくなる島民の負担。マナーの悪い観光客に眉をひそめ、観光地化に反対する声も…命に向き合い続ける猫島での暮らしに<正解>はない
東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県石巻市。その離島である田代島が今、世界中から観光客を集めている。通称、キャットアイランド(猫島)。猫好きの外国人が「日本を訪れたら必ず立ち寄りたい」と口をそろえるほどの<聖地>となっているのだ(取材・文=塩坂佳子 撮影=千葉裕幸) 【写真】「島のえき」での猫の食事風景。数十匹の猫たちが一堂に会する景色は圧巻! * * * * * * * ◆猫好きの支援で成り立つ天然の猫カフェ 田代島では高齢化と過疎化が急速に進んできた。昭和30年代の最盛期には1000人を超えた人口が、今ではわずか43人(2020年10月1日現在)。「人より猫が多い島」として有名になった田代島だが、猫の世話をする島民の負担は、ますます大きくなるばかりだ。 東日本大震災で被災し、壊滅状態となった島の暮らしを立て直そうと立ち上げられた任意団体「にゃんこ・ザ・プロジェクト」(のちの一般社団法人「田代島にゃんこ共和国」)。 寄付の募集は島民の生業に必要な牡蠣養殖棚の復旧のためだったが、その要項に「集まった金額の1割は島の猫の医療費や餌代に使用」と記したところ、短期間で多額の寄付が殺到。そのほとんどが「猫たちのことをお願いします」などのコメント付きで、猫好きと思われる人々からの支援だった。 約束通り団体では、そのお金を医療費、餌代、不妊手術代にも充ててきた。ボランティアで通い続ける獣医師の存在も大きく、震災後、島の猫の健康状態は格段によくなったと言われている。
当時、団体の理事を務めたのは、震災の2年前に仙台から夫婦で移住してきた渡辺仁悦(じんえつ)さんとゆう子さん。16年9月には、廃校となった小学校の給食棟だった建物を市から借り受け、食堂兼お土産処「島のえき」を開設した。 島を訪れる人々が山の中腹で一息つけるオアシスのような場所。夫婦は漁で生計を立てつつ、毎日店頭に立ち続けた。 当初、ここには猫がいなかった。しかしケガや病気の子を連れてきて世話をするうち、あっという間に60匹が集結。そのすべてに名前を付けて識別し、日々の餌やりから健康管理まで行い、愛情をそそいだ。 結果、「島のえき」は田代島でもっとも多くの猫に出会える《天然の猫カフェ》状態に。今も日々、訪れる人を癒やし、楽しませてくれている。 22年、「(一社)田代島にゃんこ共和国」は、一定の目標を達成したとして解散。「島のえき」の運営と猫たちの世話は別の法人に引き継がれたが、病気やケガを負ったと聞けば夫妻が駆け付け、猫をレスキュー。自宅に連れ帰って看病したり、本土の動物病院に連れていくなど強力なサポートを続けている。
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