社説:滋賀の3市長選 「次の10年」へ市民目線で
滋賀県南部で三つの市長選が行われた。野洲市は元県職員の櫻本直樹氏が現職らを破り、湖南市も前教育長の松浦加代子氏が元職らを上回り、それぞれ初当選を果たした。甲賀市は現職の岩永裕貴氏が連続無投票で3選を決めた。 野洲川沿いに並ぶ3市は、いずれも旧町の合併で2004年に誕生し、今年で20周年を迎えた。この間、京阪神に比較的近い野洲、湖南両市では人口が5万人台とほぼ横ばいを維持する。県境にある甲賀市は05年をピークに、9万人を割り込んで減り続けている。 野洲市では、建設地が二転三転した市立野洲病院の移転新築問題が焦点となった。櫻本氏は県から市に出向して行財政改革を担った経験を基に、市の財政運営は甘いと批判。病院建設費の膨張についても「市民負担が軽い形で病院経営に無理のない場所での決着を目指す」とし、支持を広げた。 また、JR野洲駅南側で民間のマンションやホテルを建てる開発計画に対しても、芝生広場やカフェを設けるとして抜本的な変更を訴えた。駅前の開発は市の長年の課題であり、軌道修正の道筋をつけられるか。48歳の若さと実行力が試される。 12年ぶりの選挙となった湖南市は、衆院選と重なったこともあり投票率が前回から8ポイント余り上がった。耐震性の低い東庁舎の整備や、旧町時代からの図書館2館の再編が懸案となっている。 石部図書館廃止の市方針は住民の反発を生み、議会も全会一致で否決した。初の女性市長となる松浦氏は現市政の後継者で、図書館再編を決めた教育行政トップだった。選挙では「市民との対話」を掲げたが、どう着地点を見いだすのか。行政全般のかじ取りは未知数だけに手腕が問われよう。 甲賀市は、共産党を除く市議会会派が市長与党の立場で、岩永氏の対立候補は今回も現れなかった。中山間地域の多い市には小規模校が多く、再編が課題とされて久しいが、実現は2校にとどまる。地域の存続意向は強いものの、少子化が加速する中、財政面や子どもの教育環境を踏まえ、政治決断を求める声も少なくない。 岩永氏は政治資金収支報告書を5年間も出さなかったり、環境省からの出向職員への威圧的な言動が発覚したりするなど、慢心もみられる。ルールを守る謙虚な市政運営を求めたい。 3市長とも次の10年を見据え、市民目線で情報開示と参加を進めて豊かな地域を築いてほしい。