〈御社の社食、いただきます!〉部品メーカーの最新社食トレンド 味や値段だけじゃない 多様性や環境に配慮したメニュー
健全な企業経営は、健康な社員の体からー。福利厚生の観点から、社食に力を入れる企業が増えている。特に不規則な勤務形態になりやすい部品メーカーの生産拠点などでは、社食が従業員の健康の一端を担っていると言っても過言ではない。近年では従業員の多様性や地域貢献、自然環境に配慮したメニューも多く登場し、〝美味しさ〟や〝安さ〟にとどまらない進化を遂げている。 人手不足を背景に、部品メーカーの生産工場などでは外国人人材の採用が増えている。出身国は様々で、当然、食文化や信仰する宗教も異なる。そのため、宗教上の観点から、食べられない食材やメニューがある従業員もいるため、企業側が手配する社食では配慮が必要になっている。 車載アンテナなどを手掛けるヨコオの富岡工場(群馬県富岡市)。社員食堂で提供されたある週のメニューは、「やきとり丼」「タラのスイートチリソース」「牛肉のバター醤油炒め」「チキンソテーおろしぽん酢」「さかなのみそ焼き」など、バリエーション豊かだ。 実はこのメニュー、同社で働くマレーシア研修生らムスリム社員(イスラム教徒)向けに提供するハラルメニューだという。一部の肉類は専門業者から仕入れ、ハラル用食材は他の食材と棚を分けて保管し、解凍作業も別々に行っている。専門業者以外から仕入れた調味料(約100種類)は、対象社員全員に使用の可否を確認し、調理作業も、ハラル対応の教育訓練を受けた人だけが担当する徹底ぶりだ。 ユニバンスでも、イスラム教徒の多いインドネシア出身の従業員が食堂を利用できるよう、豚肉を使用しないメニューなどを提供している。 地域性豊かなメニューを提供する企業もある。ディスプレー周りを手掛ける日本精機では、本社がある新潟県内の企業や学校、団体とコラボしたメニュー開発した。 その一つが、長岡保健所管内の「食生活改善推進委員」と共同開発した「減塩!健康メニュー/チキンのレモンバターしょうゆ焼き定食」。チキンを口に入れると、醤油のうま味やレモンの酸味、バターのコクが合わさり、豊かな風味を醸し出す。塩分控えめでも美味しく食べられる工夫が凝らされているようだ。地域交流などを目的に開発したメニューだが、社員からは「バターとほんのりレモンの風味が鶏肉に合っている。五穀米は見た目にも鮮やかで健康効果がありそう」と味の評判も上々だ。 工場の立地や稼働には地域住民の理解が欠かせない。足回り部品などを手掛けるヨロズは、岐阜県輪之内町の新工場に、地域住民が利用できるオープンカフェを作る予定だ。同工場周辺には飲食店が少ないこともあり、住民の憩いの場として提供する。 食の面で環境やサステイナブルを推進する動きもある。電子部品を生産するタムラ製作所は、サステイナブル・シーフードを使用したメニューを、定期的に提供している。使用するのは、持続可能な水産物の国際認証を取得した食材(サステイナブル・シーフード)で、海洋環境や水産資源に配慮して漁獲・養殖されたもの。漁獲量を守る生産者を支援する取り組みの一環だという。 変速機などを主力とするジヤトコでは、工場内で生産した野菜を料理に用いている。工場は富士山の麓、静岡県富士市にある。豊かな水で水耕栽培されたレタスを食べてみると、シャキシャキでとてもみずみずしい。野菜は食堂で販売しているほか、外部にも提供しているという。 (この企画は不定期で掲載します)