渥美二郎、千住の演歌師から紅白歌手へ!「次が売れなかったら辞めよう」勝負を賭けた『夢追い酒』が大ヒットするまで
次が売れなかったら辞めよう
それから大御所の遠藤実先生と出会う機会がありました。遠藤先生は「面白い声しているね」って言ってくださって。その後、「渥美健」って芸名でレコードデビューをさせてくれたんです。これは『空手道』という千葉真一さんが主演の映画『けんか空手 極真拳』の主題歌。「これでスターになるぞっ!」って意気込んだけど、全然売れなくて(苦笑)。結局、事務所に戻ってまた演歌師をやったんです。「売れなかったから戻ってきたんでしょ」って目で見られて、これも悔しかった。 その後、遠藤先生が「もう一回やってみないか」って声を掛けてくださったんです。当然「望むところです!」って感じですよ。それで、今の芸名になって『可愛いおまえ』って曲を出したんです。昭和51年、24歳の頃です。でも、売れなかった。2枚目は『花流浪』。これも、売れなかった。ああ、これが僕の実力かって思い、次が売れなかったら辞めようと覚悟を決めて、勝負を賭けたのが『夢追い酒』だったんです。 発売する前に演歌師の若い衆を集めて聴いてもらったら「これは良いですね」ってみんなが言ってくれて。それと当時、鶯谷にあったキャバレー「スター東京」に行って聴いてもらったんです。すると、ホステスの一人が「あなたなぜなぜ~」って歌い出したんです。初めて聴いた曲なのに「ここが印象的なのよね」って言ってくれて。そのとき、そばにいたレコード会社の関係者にも、このホステスの一言で「これはイケる」って言ってもらえたんです。 渥美二郎(あつみ・じろう) 1952年8月15日、東京都生まれ。16歳から演歌師としてのプロの道に入る。1978年発表の『夢追い酒』が大ヒット。昭和54年度日本レコード大賞ロングセラー賞をはじめ、多くの賞を受賞。同年第30回NHK紅白歌合戦に出場。95年から阪神・淡路大震災救済コンサート「人の会」を主宰し、毎年開催している。 THE CHANGE編集部
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