カウンタックやF40のようなアイコンを作れるか? マクラーレンが「デザイン大変革期」を迎える意味
2024年5月、マクラーレン・オートモーティブの新しい最高デザイン責任者、トビアス・シュールマン氏が東京にやってきた。 【写真】マクラーレンが生み出してきたスーパーカーの世界観 昨年9月に就任したシュールマン氏は、マクラーレン車のデザインを「従来とは違うやり方で変えていこうとしている」と話す。 ■現代のデザイナーに求められるスキル 自動車デザインの世界にはかつて、「スタイリスト」という職業があった。 大昔の話になるけれど、ゼネラルモータースで「自動車は美しければ売れる」というマーケティングを導入したハーリー・アールが、「アート&カラーセクション」を設立。自動車デザインの歴史書があるとすれば、きっとこのセクションの誕生が1ページ目を飾る。そこで活躍したのがスタイリストであり、行われていたのがスタイリングであった。
しかし、今のデザイナーは「スタイリングという言葉は使わないでほしい」と言う。スタイリングとデザインは違うのだ。その違いを端的に表すのが、今回シュールマン氏が披露してくれた、“新しい考え方”である。 ドイツ出身のシュールマン氏は、これまで、ブガッティのエクステリアデザイン責任者、アストンマーティンのエクステリアデザイン責任者、ベントレーのデザインディレクターを務めてきた人物だ。 「今、マクラーレンのデザイン部には、以前からマクラーレンで働いてきたデザイナーと、私が新たに採用したデザイナーがいます。私が彼らを評価しているのは、デザイナーだけれど、技術的な内容を理解している点です。エンジニアとディスカッションできる。そこが重要なポイントなのです」
つまり、デザイナーの仕事は”美しい形“を作るだけではない。シュールマン氏は「私は“形態は機能に従う”という言葉を信じていません」と言う。そして、「マクラーレンでのクルマづくりは、ひとつのパッケージなのです」と続けた。 【写真】過去の名車から現行までマクラーレンの車のデザインを見る(30枚以上) 「形態は機能に従うというのは、エンジニアリングが先行してでき上がったものにアウタースキンを被せるということ。そうではなくて、最初のスケッチの段階から、デザイン、エンジニアリング、空力、3つの部門の専門家が一緒になって開発を進めるのです。それに私たちは、F1マシンを手がけるチームもありますから、たとえば薄いカーボンファイバーのような新素材の提案を受けたり、風洞実験の際のノウハウを教わったりします」