【世界最高のビジネススクール教授50人に選出! 全米人気教授】「ランダムウォーク理論」への2つの疑問とは?
昨年は「新NISA&『オルカン』投資」が話題となった。だが、まだ投資をやったことがない人や、投資を始めても次の一手がわからない人も多いかもしれない。そんな中、世界600万部突破『サイコロジー・オブ・マネー』著者モーガン・ハウセルとゴールドマン・サックスCEOが絶賛する全米ベストセラーが話題となっている。世界的ベストセラー『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』の著者で、「世界最高のビジネススクール教授50人」に選出されたニューヨーク大学スターン経営大学院教授スコット・ギャロウェイの『THE ALGEBRA OF WEALTH 一生「お金」を吸い寄せる 富の方程式』だ。9社を起業した連続起業家でもあり、日本で「GAFA」という言葉を定着させた全米屈指の人気教授が明かす「世界最先端の“お金と人生”の戦略」とは? 本書から抜粋・編集してお届けする(構成/ダイヤモンド社・寺田庸二)。 ● 「ランダムウォーク理論」とは? 過去20年間、大型株ファンドの94%はパフォーマンスでS&P500を下回っている。 同じ期間の平均的な株式ファンドのリターンは8.7%で、S&Pコンポジット1500指数は9.7%。 ある調査によれば、この15年で、アクティブ運用のアメリカ株ファンドの生存率は約5割しかなかった。 このテーマに関する代表的な書籍に、プリンストン大学の経済学教授バートン・マルキールが書いた『ウォール街のランダム・ウォーカー』(日本経済新聞出版)がある。 マルキールは、資産価格(特に株価)は「ランダムウォーク理論」に従うと述べている。 つまり、長期的には株価の値動きを予測できないというのだ。 彼は、個別株投資は「ランダムウォーク(無作為)」な行為であり、時間をかける価値はないと主張した。 マルキールは1973年にこの本を書き、以来12回も改訂している。 最新版は2023年に発行され、グーグルやテスラ、SPAC、ビットコインについて論じられているが、今回も同じ結論に達している――長期的なアクティブ投資は、市場に勝てない(同書の議論は株式に焦点を当てているが、その大部分は他の資産クラスにも当てはまる。どの市場でも、アクティブな個人投資家が分散化されたパッシブなインデックスファンドに勝つことは稀だ)。 ● 「ランダムウォーク理論」への2つの疑問 ここで2つの疑問が生じる。 1つ目は、これはバフェットにも当てはまるのかということだ。 「オマハの賢人」と呼ばれる彼は、何年も市場を打ち負かし、優秀な投資家として尊敬されているではないか? 2つ目に、負けることが確実なら、なぜ私はアクティブ投資を勧めるのか? いくつか説明させてほしい。 ● アクティブ投資を勧める理由 まず、全資金をS&P500に投資するのは優れた投資戦略ではない。 投資では、長期的に最適なリターンを得ることだけを考えるべきではないからだ。 市場全体の変動性は高い。たとえば2000~2022年にかけて、S&P500が値下がりした年は7回もあり、そのうち3年では20%以上も値下がりしている。 数年以内に必要になることが予想される大きな出費に関する資金運用先として、変動性の高い投資資産は適していない。 住宅購入の頭金として10万ドルを貯め、それをS&P500のETFで運用していたら、いざ必要になって現金化しようとしたときに値下がりしているかもしれない。 長期的なリターンはパッシブな分散投資から得るべきだが、中間的な支出のための資金を運用するには、変動リスクを抑えておく必要がある。 それに、全財産をS&P500に投資したいと思っても、おそらく実際にはそうならない。家を買えば、大きな不動産投資になる。 勤務先の会社や、自分で起業した会社などの株に投資する機会もあるかもしれない。 広範な市場指数が最良のリスク/リターン比を提供する一方、確固とした経済的自立を得た後は、より高いアップサイドと引き換えに、大きなリスクを取る方法も探すべきだ。 お金の使い方が上手になるとは、お金のことを深く理解することだ。 そのためには、金融市場の情報をただ読む以上のことが必要なのである。 次に、アクティブ投資をしても、絶対に負けるわけではない。 「ランダム・ウォーク理論」を突き詰めると、誰も株価を予測できないことになる。 そのような主張には賛否両論あるが、私はそれは言いすぎだと思う。 市場価格は「投票機」としての市場の産物であり、不合理で情報不足であることが多い人間の判断の産物である。 明晰かつ冷静な観察者は、実際の価値と株価が乖離している場所を見抜き、その差から利益を得る(特に忍耐強くその資産を長期保有することによって)。 ● 相場の格言と投資の原則 相場の格言にあるように、 「成功は市場で最適なタイミングを見つけることではなく、市場に長くいることでつかめる」 のだ。 そしてこれが、バフェットがキャリアを通して追求してきた投資戦略だ。 彼が100万ドルの賭けを通して「市場平均より劣る」と言いたかったのは、投資家が短期的な値動きに応じて株式などの資産を頻繁に売買するような、極めてアクティブな投資戦略だ(バフェットは自身の会社バークシャー・ハサウェイを通じて公開企業の株式を購入しているが、同社は実は多くの企業を直接的に所有し、その経営を監督している事業会社だ。ネブラスカという土地柄の魅力や数々の投資に関する名言でその名を知られているものの、意外にもこの会社の業種は保険業である。バークシャー・ハサウェイは、非常に収益性が高く、その利益を他の事業につぎ込むことで分散投資を図っている保険会社と言える)。 リスクとリターン、分散投資、「市場を打ち負かそう」とするのは(ほとんどの場合)無駄な試みであること――これらは、投資の基本原則である。 (本稿は『THE ALGEBRA OF WEALTH 一生「お金」を吸い寄せる 富の方程式』の一部を抜粋・編集したものです)
スコット・ギャロウェイ/児島 修