「チューイングガム研究課」にガムの魅力を突撃取材! グミ台頭のなか"ガムの逆襲"が始まる!!
■〝ブルーベリーの香り〟という発見 このままガムはお菓子市場から存在感を失ってしまうのか? ガム業界で約6割のシェアを誇る「ロッテ」のマーケティング本部チューイング企画課主査、毛利彰太氏に話を聞いてみた。 「苦戦を強いられてはいますが、ガムは市場価値をまだ失っていないと考えています。それを知ってもらうためにいろいろと取り組んでいるんですよ」 例えばどのような? 「最近のレトロブームにあやかって、昔懐かしい板ガムの復刻版を定期的にリリースしています。この企画には当初、社内の反応は冷ややかでプレリリースの段階であまり期待されていませんでしたが、いざ発売してみるとかなり好評で、23年度の板ガムの売り上げは21年度から40%アップしています。 また、若者がガムを噛まなくなった現実がある一方、アフターコロナでは口臭や口内環境のエチケットニーズは若者を中心に高まっていることが調査などからわかっているんです。 そのため、『キシリトールオーラテクトガム』など歯や歯茎の健康を保つブランドを弊社の稼ぎ頭にすべくプロモーションに力を入れています」 続いて、毛利氏の案内で訪れたのは埼玉県さいたま市にあるロッテ浦和工場。ここには同社の中央研究所があり、その中に「チューインガム研究課」がある。 「その名のとおり、ガム商品の開発部門として弊社の創業当時からガムの研究をし続けている部門です。具体的には噛む実体となるガムベースに、約1万種類にも及ぶベースとなる香料を組み合わせて何百回と試作を重ねて、新規のフレーバーの開発も香料会社と連携して行なっています」(研究員・浦部達弘氏) 1万種類!? そんなにあるんですね。 「食感も大事ですが、ガムは香りのお菓子と呼ばれるくらい香りで味が決まる商品。だからわれわれ研究員は鼻がとても大事です。 出来たてのガムは香りが強すぎてしまうので、品質が落ち着く試作した翌日に評価します。評価のタイミングとしては、最も味覚が鋭敏だといわれる午前中に試食し、午後にディスカッションと再試作をするのが基本的なルーティンです。ですから、風邪をひいて鼻が詰まっているときは仕事になりません(笑)。 ちなみに、香料には外部流出を防ぐため個別の名前ではなく英数字の6桁番号を振って暗号化しています。なので、その番号を見ただけでどんな香りかをイメージできます。街中を歩いていて何かが香ったら『あ、これは〇〇番のニオイだな』、とか」(研究員・河野誠也氏) 1万種にも及ぶ香料を組み合わせてどんなニオイも再現できる? 「変わり種フレーバーの開発にチャレンジすることはけっこうありますよ。実際に22年4月に行なった『あなたの推しガム総選挙』という企画では、『幻の没ネタガム』として『ナポリタン味』『唐揚げ味』『納豆味』を抽選で応募者にプレゼントしました」(河野氏) 面白そうだけど、なぜ没に? 「リアルに作りすぎてしまって......。特に納豆はヌメヌメ感まで再現したから心地よくない食感になってしまい(苦笑)。ほかにも『わさび味』などにも挑戦しましたが、これも鼻に抜けるわさびの風味がリアルすぎて『ガムとしてはどうなのか?』とボツになりました」(河野氏)