【京都新聞杯回顧】“意外性の一族”ジューンテイクが手にしたダービー行きの切符 勝利を手繰り寄せた藤岡佑介騎手の姿勢
鞍上と手が合った一発に賭ける姿勢
全体的に短距離やダートでの強さを秘める一族だけに、ジューンテイクが京都新聞杯を勝ったのは少々意外な気もする。8番人気だったので、その評価は外れてはいないだろう。そんな意外性もツィンクルブライドの一族ならでは。ペールギュントもアドマイヤサブリナも人気薄での激走が多く、穴党を歓喜させてくれる馬だった。 それにしても、高速決着が目立つ京都の中距離戦での激走には驚かされる。シンボリクリスエスやキズナといった血が重なった成果だろう。 キズナは2013年、キャリア6戦目でこのレースを勝った。弥生賞5着後、皐月賞からダービーに目標を切りかえ、毎日杯から3連勝でダービー馬に輝いた。すみれS2着、若葉S5着のジューンテイクに通じるものがある。 このレースは前半1000m通過1分00秒3と馬場を考えるとスローだった。後半1000m58秒2で、後半800mは11秒8-11秒2-11秒3-11秒3の上がり勝負。軽さを求められるレースで勝利したことは、一族にとっても大きい。好位のインでじっとし、徹底的にインにこだわった藤岡佑介騎手の戦略が当たった。 見事に抜け出したので賞賛されるが、詰まっていたらアウト。一発に賭ける胆力が勝利を引き寄せたといえる。伏兵としての姿勢が鞍上にも馬にも備わっていた。父は1番人気での勝利だったが、ツィンクルブライド一族のジューンテイクは伏兵としてひと泡吹かせるかもしれない。
2着もキズナ産駒ウエストナウ
スローを演出したのは2着ウエストナウ。最初の直線でなにかに驚いたのかいきなり外へ逃避してしまい、先行勢に迷惑をかけてしまったが、その後は落ち着いてペース配分できた。 3コーナーの丘の手前で12秒7-12秒6と息を入れられたことが、最後の粘りにつながった。キャリア2戦目で逃げてレース上がり33秒8を演出し、自身も34秒0で残った。これだけ走れれば将来性は高い。 こちらも父キズナで、産駒の進化を感じる。管理するのはキズナを管理していた佐々木晶三調教師。ウエストナウとダービーに進みたかったことだろう。 3着ヴェローチェエラは流れに泣いた。スタートが合わず、後方から進めざるを得ないなか、前が先に仕掛ける勝負所で少し待った分、いいコースを通ることができた。 流れが遅いからと4コーナーで先に動き、外を回った馬たちは前に離されてしまったことを考えると、競馬のリズムは悪くなかった。重賞でも流れに乗れるようになれば前進はある。 ライタープロフィール 勝木 淳 競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。新刊『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。
勝木淳