フランス映画史に欠かせない! 女性監督とその注目作15選
2023年の第76回カンヌ国際映画祭ではジュスティーヌ・トリエ監督がパルムドールを受賞。歴史あるフレンチシネマでは数々の女性監督が活躍してきながら、パルムドールを獲得した女性監督はわずか3人目。カンヌにおいて女性監督の功績がこれまで十分に認められてきたのか、議論を呼んだ。 【写真】ドヌーヴ、バーキン…伝説のフレンチアイコンが出演した必見映画29選 今回は、あらためてスポットライトを当てたい女性監督19人の才能と、その代表作をクローズアップ。1860年代から現在に至るまで、フランス映画をけん引してきた彼女たちの存在を紹介しよう。『エル・ジャポン』2024年1月号より。 photo AFLO, GETTY IMAGES text REIKO KUBO
アニエス・ヴァルダ(1928-2019年)
後世に大きな影響を及ぼしたヌーヴェル・ヴァーグの祖母 ゴダールが『勝手にしやがれ』を発表する4年前、初長編『ラ・ポワント・コート』(1955年)を発表したヴァルダ。フィクションとドキュメンタリーを混在させて、海辺の夫婦をとらえた本作こそ初のヌーヴェル・ヴァーグ映画だともいわれたが、『5時から7時までのクレオ』('62年)で晴れて左岸派と周知される。ガラスの天井により常に資金難に見舞われながら、ベルリン国際映画祭銀熊賞の『幸福』('65年)、妊娠中絶法に苦しむ女性たちをポジティブに描いた『歌う女、歌わない女』('77年)、ベネチア国際映画祭金獅子賞の『冬の旅』('85年)などを発表。また独特のまなざしとユーモアあふれる『落穂拾い』(2000年)、『顔たち、ところどころ』('17年)など、優れたドキュメンタリーも残した彼女は、没後なお、その作品を通して世界に希望をともしている。
『5時から7時までのクレオ』1962年
歌手のクレオは自分が癌ではないかと恐れている。精密検査の結果が出る5時から7時までの2時間、死を恐れ、パリをさまようクレオの心の揺れを追うドラマ。ゴダールとアンナ・カリーナがカメオ出演、ミシェル・ルグランがミュージシャン役で登場。
A・ヴァルダ以前のパイオニアたち
映画草創期に果敢に攻めた偉業 映画の黎明期に活躍したフランス人女性アリス・ギイは、長らく忘れられた存在だった。リュミエール兄弟によって映画が発明された翌年、ギイは初のフィクション映画『キャベツ畑の妖精』(1896年)を監督。さまざまな技巧を駆使して超大作『キリストの誕生』(1906年)など1000本以上の作品を残し、渡米後はハリウッドの映画製作システムの原形を作り出した。 ※リュミエール兄弟やジョルジュ・メリエスと並ぶ映画のパイオニアでもあるアリス・ギイ