ジャズピアニスト・壷阪健登29歳、鮮烈デビュー 小曽根真が見抜いたソロピアノの魅力
最初は、断ったんですよ。ソロは経験がなかったし、ジャズとは、いかに他人と演奏するかだと思っていました。歴史上のピアニストも、ソロピアノは、ある程度、経験を積んだ後に挑戦していますしね。
だけど小曽根さんは、その後もずっと背中を押し続けてくれました。「かつて自分がゲイリー・バートンにしてもらったことと一緒なんだ」と。
<ゲイリー・バートン。1943年、米国出身。ジャズビブラフォン奏者。72年のアルバム「アローン・アット・ラスト」などでグラミー賞を7回受賞。83年、バークリー音楽大学での教え子だった小曽根を自身のバンドに加えた。2017年、小曽根と2人での日本ツアーを最後に引退した>
小曽根さんは、豪快にスイングするスタイルが身上でしたが、ゲイリーには、その内側に潜むリリシズムが見えたのでしょう。だから、自分のバンドに入れて、その資質を引っ張り出した。
小曽根さんも、僕自身に見えてない何かを僕の中に見つけてくれたのだと思います。
それで、じゃあ、やってみようかと。
--小曽根さんは、「From OZONE till Dawn」などで若手の育成に熱心ですよね?
小曽根さんは、ご自身が新しい音楽の景色を見たくて、若い人と演奏しているのでは。そこが、小曽根さんのすごいところです。
■ピアノに導かれ
--壷阪さんを「日本のキース・ジャレット」と呼ぶ人も出てきそうですね
<キース・ジャレット。1945年、米国出身。ドイツのジャズ・レーベル、ECMから出した「ソロ・コンサート」や「ケルン・コンサート」などソロピアノ作品で世界に衝撃を与えた>
ソロピアノは、逃げも隠れもできず、自分の考えが全部出てしまう。僕は、キースの音楽も好きだから、僕の中からキースっぽいものが出てしまうこともあるでしょうね。
自分に必要なものだから、自分の中から出てくる。それが、音楽を作るっていうことだと思っています。
--ソロピアノ演奏は自分を知ることになる?