中国材増加のブラジルで設備休止の動き。ウジミナスやA・ミッタル、通商障壁求める声強まる
中国からの輸入鋼材が増え市場が混乱しているブラジルで設備休止の動きが広がってきた。日本製鉄の持分法適用会社で、ブラジルの高炉メーカー、ウジミナスは12日、イパチンガ製鉄所の第1高炉(炉内容積885立方メートル)を一時休止すると発表。アルセロール・ミッタル・ブラジルも11月から3カ所の工場休止に踏み切った。ブラジル鉄鋼協会は急増する中国材に対抗し25%へ輸入関税を引き上げるよう政府に求めており、窮状が鉄鋼減産で顕在化しつつある。 ウジミナスでは同社最大の生産設備、第3高炉(同3136立方メートル)が4月から改修に入っていた。この工事が完了し、再火入れ後の出銑が軌道に乗る代わりに第1高炉を一時休止する。競争力の高い第3高炉を稼働させる一方、小ぶりな第1高炉を止めて増産を抑制し需給調整を図る形だ。イパチンガで操業する上工程は第2高炉(同885立方メートル)と第3高炉の2基体制が続くことになる。 アルセロール・ミッタル(AM)はブラジルの条鋼事業で減産を実施。ミナスジェライス州のジュイス・デ・フォラ工場(年産能力110万トン)とサンパウロ州のプラシカバ工場(同110万トン)、リオデジャネイロ州のレデンゼ工場(同100万トン)で一斉に操業を止めた。鋼板類を造るAMツバロンは高炉休止こそしていないが、半製品・スラブの生産量を減らしている。世界のスラブ需給が緩み伯国内だけでなく輸出でも販売が厳しくなっていた。 中国からの鋼材輸出は内需低迷で月間800万トンレベルが続き、米国や欧州など各地で通商障壁が設けられたことで向け先も狭まっている。中国から遠く離れ海上運賃(フレート)が割高となるブラジル市場へも中国勢が売り込むようになり、中国鋼鉄工業協会(CISA)によると9~10月も対伯鉄鋼輸出は月間20万トン強と前年から倍近くに増えている。 ブラジルでは10月から12品目の鉄鋼製品輸入で最大14%強へと一般関税が引き上げられた。世界の鋼材市況は足元では上昇傾向にあるものの、かつて世界の中でも相対的に高値を付けていた伯鉄鋼市況は安値の中国材によって値崩れしている。ウジミナス元CEOでブラジル鉄鋼協会の副会長を務めるセルジオ・レイテ・デ・アンドラーデ氏は11月下旬に伯経済紙、バロール・エコノミコのインタビューで「1~10月累計でブラジルの鉄鋼輸入は60%増えた」と説明し、通商対策の必要性を訴えている。