佐藤隆太「あなただってずっと“善き人”でいられるわけじゃない」
佐藤 また、長塚さんの「常に開かれたチーム作りを心がけている」という言葉にもグッときて、僕も長塚さんのカンパニーの一員としてモノづくりをしていきたいと参加を決めました。
── その意外なキャスティングだったという、ジョン・ハルダー教授について、佐藤さんは彼をどんな人間だと捉えていますか。 佐藤 特別に善良なのではなく、僕たちと同じ普通の人だと考えています。その普通の人間が時代のうねりに巻き込まれた時、どう行動し、その結果、どうなっていくのか──。 時代や置かれている状況は違いますが、共感できる部分も多く、そして、ハルダーと同じ立場に立った時、自分ははたしてどこまで“善き人”でいられるのかと“自分ごと”として考えることができる作品でもあると思いました。 ── しかし、この「善き人」というタイトル自体が、佐藤さんの笑顔のイメージにぴったり重なります。 佐藤 いやいや(笑)。でも、ハルダーのように、「こんなはずじゃなかったんだけどな」と、自分が思っていたのと違う展開になってしまうことは結構ありますね。
今は自分がどうしたいかより、家族や周囲の人の思いが大切
── 一人芝居、そして今回と、舞台への出演が続いていますが、佐藤さんにとって舞台の魅力とは? 佐藤 僕はデビュー作が舞台だったんです。宮本亞門さん演出でウルフルズさんが音楽を手がけたミュージカル『BOYS TIME』が初舞台でした。観客の皆さんと同じ空間にいることってやはり強いし、何より舞台はナマモノ。お客様が作り出す客席の空気感によってまったく違うものになるんですよね。 佐藤 先ほどお話した一人芝居は、客席数200席ほどの小さな劇場で上演しました。当然映像のほうが多くの人の目に止めてもらえますが、舞台での一方通行ではない、人と人がつながりあえる瞬間を、とても幸せに思いました。パンデミックという、他人と距離を置かざるを得ない時間を経験したからこそ、お客様と直接やりとりができる空間を、とても豊かであり贅沢だと感じたんです。 そんなわけで、このところ、舞台に立つことへの欲望が今まで以上に強くなってきました。そういう時に、今回のお話をいただいたんです。やはりやるべきタイミングだったのかな(笑)。 ── 普段は、佐藤さんはどんなスタンスでお仕事を選んでいるんでしょう? 佐藤 俳優はオファーをいただいて初めて動きだすことができる職業。たくさんの俳優がいるなかで、僕の名前を思い浮かべてくれるのはとても光栄なことですし、スケジュールが合う限りは、基本的にはお受けしたいと考えています。そして、佐藤隆太を呼んでよかったと思ってもらえるようないいお芝居をしていきたいですね。