佐藤隆太「あなただってずっと“善き人”でいられるわけじゃない」
── それほど悩んだ理由と、それでも最終的には引き受けると決めた理由はなんだったのでしょう? 佐藤 最初に台本を読んだ時、非常に難解に感じましたし、僕がこの役を背負って舞台に立っている姿がなかなか想像できなかったんです。自分にとってチャレンジングな作品でも、だいたい直感で、「これは受けたほうがいい」と感じるものですが、今回は迷いました。でも、ほかの仕事をしていても、ずっとこの作品のことが頭から離れなくて。これは何か不思議な縁なのではないか、この縁を手放したくないと思うようになり、最後は飛び込んでみることを決めたんです。
── なぜ自分にオファーがあったのか、確認されたりしました? 佐藤 それはなかなか聞けないですね。何かしら自分に合うところがあってオファーしてくださったとは思うので、それ以上、聞くのはちょっと欲張りじゃないかと思ったり(笑)。 ── たしかに(笑)。 佐藤 でもおっしゃっている意味はわかります(笑)。僕自身、想像もしていなかったキャスティングでしたから。ただ、「なぜ自分を選んでくれたのか」と、確認はしていませんが、今回、オファーを受けるかどうか迷っている時に、(演出の)長塚圭史さんからメッセージをいただいたんです。その中で、2020年1月に上演した僕の一人芝居『エブリ・ブリリアント・シング~ありとあらゆるステキなこと~』を観てくださったと書かれていて。 ── お客さんとコミュニケーションを取りながらストーリーが進行していく、観客参加型の作品だったと聞いています。 佐藤 僕が客席に向かって話しかけたり、お客様に舞台の上にあがってもらったりと、コロナ禍においてもっとも不向きな作品でして、去年、ようやく再演することができました。長塚さんのメッセージには、(一人芝居での)お客様との垣根を超えたやりとりがよかった、今回もお客様に向けて語るせりふがけっこうあるので、その経験をいかしてほしいといった趣旨のことが書かれていました。