馬毛島基地建設が島にもたらした「恩恵」と「弊害」…「3年延長は重い」不安募る観光、漁業 地場産業間の格差はさらに広がる
「3年延長は重い」-。工事の遅れがたびたび指摘された馬毛島(鹿児島県西之表市)の自衛隊基地整備。防衛省が10日公表した新たな工事工程はそれを認める形で、地元に波紋を広げた。着工から1年8カ月がたち、基地工事による“恩恵”が顕在化。市民は格差拡大や生活への影響を懸念し、すんなり受け入れられない現状がある。 【写真】〈関連〉馬毛島を視察する木原稔防衛相(左から2人目)=7月18日、西之表市馬毛島(防衛省提供)
市街地のある飲食店は、工事関係者で新型コロナウイルス前を超えるにぎわいを見せているという。近くの宿泊施設は、工事に関連する業者が年単位で部屋を押さえ、ほぼ満室が続く。 あおりを受けているのが観光業だ。市内でダイビングショップを営む林哲郎さん(77)は「泊まる場所がないから種子島に行けないという声は多い。国は工事だけを考えるのではなく、産業支援にも本腰を入れないと、もろ手を挙げて歓迎とはいかない」と話す。 市商工会役員の1人も、基地整備への理解を広める鍵として「格差解消」を挙げる。「休日の作業員をどう生かし、地元に利益を生み出すか。基地完成後の観光振興にもつながる仕組みを考えなければ」 馬毛島東海域は漁業制限区域が広がる。工事の長期化に伴い、期間延長が予想される。島周辺を漁場としていた同市住吉の浜上三郎さん(71)は「海の濁りが指摘されており、長期の工事が終わった後にどうなるのか。漁業の将来が見えない」と不安を口にした。
当初4年程度とされた基地整備は7年に延び、子育て世代にも影を落とす。「工事関係者が急増し、知らない顔が増えた。子どもたちだけで習い事に行かせたり、遊ばせたりできなくなったという声をよく聞く」と、市内の小学校でPTA役員を務める40代女性。「とにかく早く工事が終わってほしい。それだけです」
南日本新聞 | 鹿児島