徳島県那賀町の委託でエビ養殖の実証実験へ 鋸南の企業(千葉県)
エビの陸上養殖を手掛ける鋸南町の企業「Seaside Consulting(シーサイド・コンサルティング)」が、徳島県那賀町から委託を受け、同町内でクルマエビの養殖の実証実験をすることになった。実験レベルながら、同社の技術が自治体に採用されるのは初めて。19日には、那賀町の幹部ら6人が鋸南町にある同社の養殖施設を視察した。同社の平野雄晟代表取締役(54)は将来、自社の技術を全国に広めるスタートラインにしたい、と意気込む。 実験では、那賀町の廃校になった小学校の校舎を利用する。給食室だった約123平方メートルの部屋の中に、長さ3メートル、幅2メートル、深さ75センチのポリ塩化ビニール製の水槽を3基置く。約1000匹のクルマエビの稚エビを兵庫県の水産会社から買い付け、三つの水槽で8月から12月半ばごろまで養殖する。水槽の水質を保つ技術などに、同社が鋸南町の養殖場で積み上げたノウハウを使う。 今回の実験に当たり、同社は今月12日、那賀町と委託契約を結んだ。業務委託料は約630万円。今回の実験で効果が確認されれば、来年度は同じ敷地内にある水泳用プール(縦25メートル、横17メートル)で規模を大きくし、太陽光発電を利用した同社の低コストの養殖法で事業化に向けた実験に移るという。 那賀町は徳島県南部の山間地にある。2005年3月、鷲敷町、相生町、上那賀町、木澤村、木頭村の5町村が合併して発足した。面積の95%が山林で、町によると合併当時に約1万人だった人口は現在、約7200人。高齢化率が約52%(いずれも今年5月末現在)と、過疎化と高齢化が進む。 打開策として町は、大手広告会社の関連会社と、活性化に向けた包括連携協定を締結。昨年度、「未来創造プロジェクト」を策定して、企業誘致で移住を促すことや、路線バスの自動運転の実験などに取り組んでいる。 今回のエビ養殖は、その一つ。廃校になった建物や施設を有効に使い、養殖で育てた海産物を町の特産品に育てたい考えだ。 視察した那賀町農業振興課の岡久譲二課長は「山間地で海産物を養殖するという物珍しさでも注目を集めたい。(実験に)大いに期待している」と話す。 平野代表は「人口減少で廃校も増えている。うちの会社の養殖技術を、そうした建物などの有効活用でも役立てたい」と話している。