山口茜が4度目の優勝飾ったジャパンオープン、パリ五輪出場組が奮闘した価値
女子ダブルスの志田千陽/松山奈未(再春館製薬所)も、準々決勝で敗れた。中西/岩永(BIPROGY)との日本勢対決は、93分の激闘。攻守両面で戦える両ペアらしい一進一退の攻防に会場が沸いた。ただし、志田/松山は、五輪から帰国後間もなく、メディア出演等で多忙だったため調整不足は否めず、ファイナルゲームは力尽きた。試合中から腹痛に襲われていた松山は、試合後の取材対応を回避。志田は「負けてしまったけど、今、できることはやり切った上での負け。五輪が終わって、自分たちを知ってくださっている方が多いなと、試合をしていて感じた。応援にもっと応えられるように、また日本で試合をするときには、成長した姿を見せたい」と話した。
■五輪出場組が調整不足の中でも重視した、日本のファンへの恩返し
山口、奈良岡、渡辺/東野、志田/松山。上記で触れた選手は、パリ五輪から間もなく、調整不足のままでの出場だった。しかし、誰もが「日本のファンの前でプレーできる貴重な機会」と大会を重視。できる限りのパフォーマンスで声援に応えた。女子シングルスの大堀彩(トナミ運輸)も、その一人。準々決勝でブサナン(タイ)に敗れたが、負傷しているヒザが震える中でも弱気を見せず、25-23、19-21、21-23と3ゲームすべて競り続ける1時間29分の死闘を戦い抜いた。力を出し尽くした大堀は「何回も(気持ちが)折れかけたけど、子どもたちも見てくれている。自分が今やっている使命というか、小さい子どもたちに夢や希望を少しでも与えられれば、やっていることの価値があると思うので、良い背中を見せられるようにと思ってやっていた」と激戦を振り返った。
五輪出場組が無理を押してコートに立ち、その中から優勝者を輩出して盛り上がるほどの健闘を見せた。その価値を無駄にしてはいけない。2組のペアがメダルを取り、帰国後のバラエティー番組などでも存在感を示し、新たな関心が向いているのは朗報だ。一方、日本バドミントン界は財政難に直面し、今季後半は協会からの日本代表派遣を止めている状況でもある。世界を相手に、スキルフルで迫力や闘志を感じるプレーで立ち向かい、競技の魅力を伝えられる選手を抱えている状況と、選手が日本のために献身性を持っていることを最大限に生かすことが、日本バドミントン界の再興につながることが望まれる。
文:平野貴也
平野 貴也
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