数字が苦手なビジネスマンでもよくわかる!…「会社の経営成績」が読み解ける「損益計算書」の超キホン【公認会計士が解説】
会社の数字が読めないビジネスマンは少なくありません。しかし、基本的な事項を理解すると、会社の様々な状況が理解できるようになります。今回は、決算書のなかで最も重要な「損益計算書」について見ていきましょう。税理士・公認会計士の岸田康雄氏がやさしく解説します。 【早見表】年金に頼らず「夫婦で100歳まで生きる」ための貯蓄額
「損益計算書」は、企業の1年間の経営成績を示す決算書
生徒:先生「損益計算書」とはどのようなもので、どのような計算がされているのでしょうか? 先生:損益計算書は「企業の1年間の経営成績」を示す決算書です。ここでは、収益から費用を差し引いて利益が計算されます。この利益が、企業が1年間に稼いだ儲けなのです。どのようにお金を稼いだのか、ステップごとに理解することができます。 生徒:ダメだ、私には数字の羅列にしか見えません…! 先生:大丈夫です。上から下へと順番に見ていけば「企業がお金を稼ぐ仕組み」が分かりますよ。日本の会計基準で示される5種類の利益が、どのように生み出されるのか、ステップごとに見ていきましょう。 生徒:はい…。 ◆1番上に記載されているのが「売上高」 先生:まず1番上に記載されているのが「売上高」です。損益計算書の計算は、まず「売上高」から始まります。これは商品を売ったり、サービスを提供したりして、どのくらいのお金を受け取ったのかを示すものです。 生徒:お客様からもらったお金ですね。 ◆売上高から原価を引いたもの=「売上総利益」 先生:その下にあるのが売上原価です。商品を売ったり、サービスを提供したりするには、その商品自体を仕入れたり、経費を支払ったりすることが必要です。販売するために直接かかった費用のことを原価といいます。売上高から原価を引いたものが「売上総利益」ですね。粗利益とも呼ばれます。商品やサービスそのものにかかった費用である原価だけを引いた売上総利益は、商品・サービスの付加価値を示すものなので、企業の競争力の源泉ともいえるでしょう。 生徒:なるほど。安く仕入れて、高く売れば、それだけ売上総利益が増えるということですね。 ◆売上総利益から「販売費及び一般管理費」を引いたもの=「営業利益」 先生:しかし、費用はそれだけではありません。販売するための費用がかかります。交通費や広告費などの販売費、家賃や水道光熱費などの管理費です。売上総利益から「販売費及び一般管理費」を引いたものを「営業利益」といいます。営業利益は、事業そのものからしっかり利益を出しているかどうか、本業での稼ぐ力を判断するための指標になります。 生徒:なるほど。事業を営むには、いろいろな経費がかかりますね。 ◆営業利益から「営業外収益・営業外費用」を差し引いたもの=「経常利益」 先生:営業利益から「営業外収益・営業外費用」を差し引いたものを「経常利益」といいます。「営業外収益・営業外費用」は、預金から得た利息や、借金のために支払った利息などです。「経常利益」は、事業での儲けだけでなく、事業以外のお金の動きに伴う収益や費用までを考慮した利益です。運転資金が足りないときは銀行からお金を借りることもあるでしょう。利息を支払い続けても儲けがプラスにならないと事業が続きません。経常利益は、会社が継続的に利益を生む能力があるかを判断するための指標になります。 生徒:市場金利が上がって、借入れの利率が上げられると儲けが少なくなりますね。 ◆「税引き前利益」から税金を差し引いたもの=「当期純利益」 先生:経常利益から「特別損失・特別利益」を差し引きしたものを「税引き前利益」といいます。「特別損失・特別利益」は一時的に発生した利益・損失です。投資目的で持っていた金融資産の売却によって得た利益や、災害によって発生した被害などがあります。そこから税金を差し引いたものが「当期純利益」です。 生徒:税金には、どのようなものがありますか? 先生:国に納める法人税、地方自治体に納める法人住民税及び法人事業税があります。当期純利益は会社の最終的な儲けを示します。これ以上負担すべき費用はありません。これが株主のものになる利益ということです。株主にとっては最も大事な利益ですね。当期純利益を発行済株式総数で割った1株当たり利益は、株式市場において重要な指標になります。 生徒:利益によって、企業が1年間に稼いだお金の大きさを測定しているのですね。