19歳指揮官が率いる慶應志木、逆転サヨナラで4回戦進出【24年夏・埼玉大会】
<第106回全国高校野球選手権埼玉大会:慶應志木6-5朝霞西 >17日◇3回戦◇県営大宮球場 【トーナメント表】埼玉大会 結果一覧 県営大宮球場・第3試合は、慶應志木 vs 朝霞西。 先発は慶應志木が2年生左腕の正野 敬二郎、一方の朝霞西が右腕の香林 咲翔(3年)と両エースが登板し試合が始まる。 試合はまさにシーソーゲームとなる。 先制したのは慶應志木。 慶應志木は初回、朝霞西・香林の立ち上がりを攻め、先頭の山田 隼士(3年)がセンター前ヒットを放ち出塁すると、続く藤田 京輔(2年)がきっちりと送り一死二塁とする。さらに3番・松田 陽貴(2年)もレフト前ヒットを放ち一死一、三塁とすると、二死後、5番・永島 康太朗(3年)の所で慶應志木ベンチはエンドランを仕掛ける。永島は期待に応えライト前へポトリと落ちるタイムリーを放ち1点を先制する。 対する朝霞西は2回表、一死から5番・平山 大地(3年)がレフト前ヒットを放ち出塁すると、続く香林もレフト前ヒットを放ち一死一、二塁とする。さらに7番・高村 櫂成(3年)の送りバントが相手エラーを誘い一死満塁とチャンスが広がると、続く丸山 温仁(3年)がライト前へタイムリーを放ち同点とする。だが後続は連続三振に倒れ1点でこの回の攻撃を終える。 すると、慶應志木は3回裏、先頭の俊足・山田のショートゴロが内野安打となり出塁すると、山田はすぐさま二盗を決める。続く藤田の内野ゴロで三塁へと進むと、3番・松田がセンター前タイムリーを放ち2対1とする。 対する朝霞西は4回表、一死から7番・高村が四球で出塁すると、続く丸山温のピッチャーゴロが相手エラーを誘い一死一、二塁とする。さらに9番・高橋 廉亮(3年)がセンター前ヒットを放ち一死満塁とすると、続く安藤 空悟(3年)の内野ゴロの間に同点とする。 中盤は朝霞西のペースとなる。 朝霞西は6回表、この回先頭の高村がセカンドへの内野安打で出塁すると、一死後、9番・高橋廉も四球を選び一死一、二塁とする。続く安藤の所で一走・髙橋廉はキャッチャーからの牽制球で刺され二死三塁となるが、安藤がレフト前タイムリーを放ち3対2と逆転に成功する。 朝霞西は7回表にもこの回からマウンドに上がった慶應志木の2番手・井上 将志(3年)の代わり端を攻め、この回先頭の宮腰 要(3年)が四球で出塁すると、続く平山が左中間へタイムリー二塁打を放ちまず1点、6番・香林も四球を選び無死一、二塁とする。さらに相手ワイルドピッチでそれぞれ進塁し無死二、三塁で続く高村を迎えた所で、慶應志木ベンチはエース正野を再びマウンドへ戻す。 7番・高村、8番・丸山温が凡退し二死となるが、9番・髙橋廉がレフト前タイムリーを放ち5対2となる。その際、二走・香林はレフトの好返球により本塁憤死するが、貴重な追加点を奪う。朝霞西が流れを掴んだかに思われた。 だが、その裏慶應志木が猛反撃を見せる。 慶應志木は7回裏、6回からマウンドに上がった朝霞西の二番手・久保 亮太(3年)に対し、一死から7番・井上 陸斗(3年)がレフト前ヒットを放ち出塁すると、続く井上将もレフト前ヒットを放ち一死一、二塁とする。さらに9番・正野がきっちりと送り二死二、三塁とすると、続く山田がショートへタイムリー内野安打を放ちまず1点、さらに2番・藤田の所で慶應志木ベンチはエンドランを仕掛けると、これが見事に決まり藤田がレフト前タイムリーを放ち5対4とする。 そして迎えた最終回、慶應志木は一死から山田が左中間へ二塁打を放ち出塁すると、続く藤田もライト前ヒットを放ち一死一、三塁とする。ここで3番・松田の打球はセカンドゴロで併殺かと思われたが、これをセカンドがファンブルしついに5対5の同点。勢いに乗った慶應志木は、さらに4番・永澤 昊大(2年)がライト前ヒットを放ち一死満塁とすると、最後は主将・永島がライト前へサヨナラヒットを放つ。 結局、慶應志木が逆転サヨナラ6対5で朝霞西を下し4回戦進出を決めた。 まずは朝霞西、中盤、慶應志木・正野を攻略したかと思われた。継投もうまく行ったかと思われたが、最後力尽きた形か。 一方の慶應志木はエース正野が攻略されるも、とにかく粘った。打線が執拗についていき最終的には朝霞西を上回る14安打を放ち打ち勝った。特に1番・山田の足の速さと5番・永島の勝負強さが際立つ。藤田、松田の2年生コンビもよく繋いでいた。何より19歳の指揮官、石塚監督の冷静さが際立っていた。 「信じていたんで想定はしていたんですが、まさか実現するとは。劣勢になるのはわかっていたので最後まで諦めないようにとはずって言っていた。それを体現してくれて選手に感謝しかない。正野はこれまでに比べるとボール先行になったり変化球も決まっていなかったがよく序盤2点で抑えてくれていた。悪いなりによく投げていた。継投はまだ今大会井上将は投げていなかったので流れを変えてくれるかなと思って行かせたがうまく行かなかった。ただその間正野が少し休めたから必要な間だったのかなと思って。9回の攻撃は僕も一緒になってぶつかっていく。練習試合や春季大会での成功体験が活きている。永島はあそこで回ってくるのは彼がここまで努力した結果だと。必然的に回ってくるのかなと。あの子がいなかったらチームはまとまっていないので。主将・永島がいたからこのチームは成り立っている。偶然としては出来過ぎ。今まで練習してきたことが出たよと。ただここから。次からがチャレンジャーとしての本当の戦い。次の上尾戦は初回から自分たちらしく良い準備をして臨みたい。4番の子は緊張しいなので。何か変わればと。あと、攻撃のタイムは一度使ってみたかった(笑)」と石塚監督は試合を振り返った。 主将・永島も「怪我をしてバッティングしかできない時期が続いて、大事な場面での代打として石塚さんが使って下さって。当初怪我のこともありうまくいかない時期もあったんですが、開き直って脱力してボールを待てるようになり自分の間で呼び込めるようになった。メンタル的にも怪我を乗り越えることができたのが大きかった。大事な場面で打つことの成功体験も積めていたので、今日も変に緊張せずに自分に自信を持って臨めた。サヨナラの場面は今日やや開き気味になっていて前の打席でアウトハイを下から振って三振したのであの場面は踏み込む意識を持ってイメージして打席に臨んだ。昨秋不甲斐ないピッチングをして11月の終わりに肘の靭帯を痛めて。怪我が判明した時は悲しくて泣いてしまったのですが、親や監督が励ましてくれて。チームのために切り替えてやろうとまずは声出しから始めてリハビリを頑張って最後の夏を迎えているので気持ちも入っている。自分が主将に選ばれた理由として自分が日頃から明るい雰囲気で声を出してみんなを鼓舞する面が大きかったのかなと個人的に思っている。怒られたり暗い雰囲気の時にせっかくなので辛いことも明るく乗り越えていこうと意識してやっている。そこが信頼してもらえているのかなと。石塚さんからはサヨナラの直前ネクストで『俺と心中するぞ!』と言われて、ガッツポーズで応えました(笑)」(永島)と、呼応する。 こちらが欲しいコメントの意図を汲み取り的確に答え、被った答えにならないようアレンジをし、場合によっては笑いも取る。これが19歳と18歳のインタビューである。慶應志木の未来は明るい。