「年寄りにはわからないから」と敬遠していると脳が老いる…高齢者が本当に使うべき「デジタルツール」とは
年をとっても元気でいるにはどうすればいいか。脳神経内科医の内野勝行さんは「退屈な生活を送っていると脳の衰えが加速してしまう。高齢者こそ最新のデジタル機器を活用して脳に刺激を与えたほうがいい」という――。 【この記事の画像を見る】 ※本稿は、内野勝行『退屈ボケの処方箋 脳はスマホで若返る』(辰巳出版)の一部を再編集したものです。 ■刺激のない生活が脳の衰えを加速する 人間の脳は、大きく大脳・小脳・脳幹の三つの領域に分けられます。 もっとも大きい大脳は、記憶や思考、感情、言葉、理性などさまざまな機能を司っており、担当する機能は部位によって違います。 小脳は頭の後ろのほうにあり、主に運動能力や身体を整える能力を司っています。そして脳の「付け根」にある脳幹は、呼吸や意識など、生命の基本的な機能を担当しています。 歳を重ねると、この脳が全体的に萎縮していきます。萎縮を止めるのは難しいのですが、やはり身体と同じように、栄養不足にならないように注意したり、トレーニングをしたりすることで衰えにブレーキをかけることは可能です。 そして、脳にとってのトレーニングが、刺激を受け取ったり、感情を揺さぶられたり、考えたりすることです。逆に、なんの刺激もない退屈な生活が脳に悪いのは、家にこもっていると身体の運動能力が落ちるのと同じですね。
■若者には悪影響でもシニアには役立つものもある ゲームやSNSに時間を費やすことは、たしかに若い世代にとってはマイナスかもしれません。しかし、シニアにとってはどうでしょうか? 新奇な情報に接することなく退屈な毎日を送るシニアにとっては、そういった刺激は救世主になり得ます。脳を活性化してくれるのです。 怪しげな出会いや誹謗中傷など悪い側面ばかりが注目されがちなSNSも、シニアに対してはとても大きな価値があります。社交性は加齢とともに落ちていく傾向がありますが、それを補ってくれるからです。 SNSでのやりとりだって、シニアにとっては貴重なコミュニケーションです。 時にエスカレートして熱くなることがあっても、それは脳への刺激でもあります。 物事を思い出す際には脳のシナプスが活性化します。しかし今の若い世代はスマホで検索してしまうため活性化しづらく、スマホは脳が衰える要因になっている、という説があります。 それはそれで一理あるのですが、やはりシニアにとっては事情が違います。シニアのシナプスは過去の積み重ねで十分に発達しているので、「あれ、なんだっけ?」と思い出す時間は、言ってしまえば必要ありません。 それよりは、さっとスマホで検索して時間を節約したほうがいいでしょう。脳が違えば、スマホとの付き合い方も変わるのです。 ■ドーパミンは加齢とともに減っていく 「ドーパミン」という名前を聞いたことがあるかもしれません。これは脳内の神経伝達物質で、心地よさや意欲と関係があることがわかっています。仕事や趣味などで大きな達成を成し遂げたときに、脳内ではドーパミンがドバッと分泌され、快感ややる気が生まれるのです。 ところがこのドーパミンは、加齢とともに減っていくことがわかっています。シニアの生活がなんとなく退屈に感じられてしまうことには、脳科学的な根拠もあるのです。一日中、鬱々とテレビを見続けているようなシニアの脳では、ドーパミンが枯渇してしまっているのでしょう。 でも、何歳であってもドーパミンを出すことは可能です。その手っ取り早い方法が、新しい刺激に接することです。そしてそのためにはデジタルが最適なんです。