「年寄りにはわからないから」と敬遠していると脳が老いる…高齢者が本当に使うべき「デジタルツール」とは
■50年前の青春の1曲をすぐに探し出せる また、大昔に見た映画やテレビ番組なども、ネット上に残っている場合はしばしばあります。タイトルを思い出せなくても、「ニューヨーク 独身男性 バツイチ 映画」などといった断片的なキーワードから正解にたどり着けるのも、ネットのすごいところです。 なつかしい音楽も過去のいい記憶を呼び起こしてくれますが、ありとあらゆる音楽があふれているYouTubeなどのサイトなら、知る人ぞ知る一曲も見つかります。あなたが卒業した小学校の校歌も、おそらく見つかるのではないでしょうか。 「あの曲はなんだったっけ……」と思い出せない曲があっても大丈夫。「フンフーン♪」という鼻歌から曲名を当ててくれる検索アプリはいくつもあります。 キリがないのでこのあたりにしますが、とにかく、過去の思い出を見つけやすいのもデジタルの特徴です。30年ぶり、50年ぶりに、昔楽しんだ光景や映画、音楽と再会できたら、当時の記憶がブワッとよみがえるに違いありません。そのとき、脳は一気に活性化しています。 ■外を出歩く体力はなくてもバーチャルの世界は闊歩できる デジタルの世界には、VR(バーチャル・リアリティー)など仮想体験があふれています。 「VRに夢中になると現実を忘れてしまう」などと批判されることもある仮想現実ですが、やはりシニアが元気に過ごすためには効果的です。シニアは若い世代ほど身軽には動けませんが、代わりにバーチャルな世界でいろいろなことを体験できるでしょう。 猛烈に暑い夏や寒い冬は、快適な部屋にいながら、旅行を仮想体験してみましょう。YouTubeには世界中の動画があふれていますし、ゲームや映画を楽しんでもいいでしょう。かつて旅行に行った場所の映像などを見ると、記憶を司る脳の部位である海馬への刺激にもなります。 ちなみに、「寝る前にスマホを見ると睡眠のリズムが崩れる」と言われるのは、パソコンやスマホの画面が発するブルーライトという光線が太陽光にも含まれているため、それを見ることで身体が目覚めてしまうからです。 しかし私はよく患者さんに、「朝、起きたらスマホを見て!」と言います。ブルーライトを利用して身体を目覚めさせるというわけです。シニアの方は体内時計が狂いがちですが、スマホを利用することで、逆に整えることもできるのです。 ---------- 内野 勝行(うちの・かつゆき) 脳神経内科医、金町駅前脳神経内科院長 帝京大学医学部医学科卒業後、都内の神経内科外来や千葉県の鏡戸病院副院長を経て現職。TBS「林先生が驚く初耳学」などの医療監修も務め、テレビ出演多数。著書・監修書には『1日1杯脳のおそうじスープ』『疲れをとりたきゃ腎臓をもみなさい』(ともにアスコム)など。 ----------
脳神経内科医、金町駅前脳神経内科院長 内野 勝行