■ 閑静な立地をいかす、旧邸宅ホテルが誕生

旧邸宅をいかした和館・洋館の併置式ホテル。中央のジェラテリアは宿泊者以外も利用可

淡路島を拠点に、西日本で数々のホテルを展開する「ホテル ニューアワジ」（本社：兵庫県洲本市）。団体向き温泉宿の代表格でもあるが、年々「くつろぎ」重視の客室が増加傾向に。１１月５日には、同社で京都で３棟目のホテルが開業。ここでは歴史的建物を生かしたわずか１０室という、贅沢な空間を堪能できる。 【写真】2階の部屋より、落ち着く空間 世界遺産「仁和寺」からほど近い閑静なエリアにある「ＨＯＴＥＬ 宇多野京都別墅（うたのきょうとべっしょ）」（京都市右京区）は、昭和初期の邸宅を改修。客室は当時の建築意匠をいかした書院造の和室やクラシックな洋室ほか、和モダンな新客室がそろい、全室に京都清水の自家温泉を引いた風呂が完備されている。

本館の2F客室からは、枯山水の広大な庭を鑑賞できる

京都にある既存のグループホテルは、観光客で賑わう東山に位置する。副社長の木下絋二さんは、今回のホテルについて「ここ宇多野エリアは、伸びしろがたくさんある地域。手ぶらで世界遺産の寺が点在する『きぬかけの路』を散策したり、近くの嵐電からのんびり嵐山へ行くのもいいですね。ホテルができて、周りの方たちに『活気づいた』と言ってもらえる存在になれたら」と意気込む。 また、近隣は店が少ない住宅地のため、よりホテル内での「居心地のよさ」を追求。入口から靴を脱いで裸足で歩ける昔ながらの旅館スタイルで、照明や欄間には、京都在住の和紙作家・堀木エリ子氏による和紙を施し、あたたかな空間が広がる。食事を楽しむダイニングからは、緑あふれる約１０００坪の日本庭園を鑑賞でき、船着き場をイメージした枯山水が目をひく。 同ホテルは有形文化遺産の登録をめざす貴重な建物だけに、柱や壁などに手を加えることはできない苦労も。とはいえ、宿泊者への快適性を兼ね備えた改修も必要で、歴史的建物とホテル専門の２人の設計士によって試行錯誤の末、完成したそう。

■ 高級ホテルは緊張…目指したのは「ゆったり」

ホテル中央には、廊下から見渡せる京都らしい中庭も

木下さんによれば、同ホテルグループで「くつろぎ」「高級感」をより重視し始めたのは２０００年ごろから。「高級ホテルは緊張するので、もっとゆっくり団らんを楽しんでもらいたい。『何か具体的なものがないと』と、各部屋に温泉風呂を作っていきました」。 ２００８年には、リゾートホテル「淡路夢泉景」に全１８室の露天風呂客室が誕生。団体旅行での温泉旅館の印象が強かった「ホテル ニューアワジ」でも、現在は約半数が温泉付き客室という。