ジャニーズ性加害問題は特殊ではない…来院した被害男性は全相談件数の0.2%?専門医が鳴らす警鐘
昨年3月、イギリスのBBCが長編ドキュメンタリーを放送したことがきっかけで、旧ジャニーズ事務所の消滅に至った創業者・故ジャニー喜多川氏による性加害問題。この6月にスイスで開催された国連人権理事会の会合でも、同氏の性加害問題など、日本が抱えるさまざまな人権侵害問題が取り上げられた。 「自分の欲求を満たすためだった」…22歳男性教諭「女子中学生を空き家で性的暴行」呆れた犯行動機 「男だって、性暴力の被害者になり得るんだよ」――’23年3月、欧州の留学先で、BBCドキュメンタリー「Predator: The Secret Scandal of J-Pop」を観たタカシさん(仮名)の脳裏に、10数年前のおぞましい記憶が蘇った。 当時、日本を代表する国立大学の大学院生だったタカシさんは、学者として将来を嘱望されており、大手出版社から自身初の著書を出版したばかりだった。本を読んだという組織から講演の依頼もちらほら入るようになり、積極的に引き受けていた。はた目には順風満帆に見えていたかもしれないが、心の中はいつも不安でいっぱいだった。 父も祖父も大学教授という家柄ゆえに、タカシさんは少年時代から、自分も将来は大学教授になると思い込んでいた。しかし、大学受験に失敗。不本意ながら、有名私大の経済学部を卒業し、一度は世界的な企業に就職したものの、仕事に興味が持てずに退社。第一志望の国立大学に入り直し、遅まきながらも学者として生きる道が見えてきていた。 だが、難しいのはここからだ。多くの若手研究者は大学研究室で非正規ポストに就き、厳しい研究環境に置かれている。大学教員の採用枠は極端に少なく、博士号取得者の就職率は学部卒や修士修了者よりも低い。博士号取得者を採用する企業は少数派だ。 「論文を書いている時も、プレッシャーで死にそうになったけど、今はもっとつらい」 タカシさんはたびたび友人にそう漏らしていた。 被害に遭ったのはそんな時だった。タカシさんは地方都市で講演した後、主催者の女性に夕食をご馳走になった。 「先生のお話、感動しました。若くて有望な人って素敵だわ。今後も応援させていただきますね」 ハイブランドのスーツに身を包んだ女性は目を輝かせ、もっと話が聞きたいと近くの公園に向かって歩き出した。 有力者の機嫌を損なってはいけない。しぶしぶついていくと、やにわに木陰に誘導され、唇を奪われた。「何するんですか。やめてください」と抗議すると「大丈夫。ちょっとご褒美をあげるだけ」。クスクス笑われた。下半身をまさぐられ、チャックを下ろされる。驚きと嫌悪感で身体が震えた。「あら、可愛いわねぇ」。女性はそう言って、タカシさんの股間に顔を埋めた。 「拒絶しようと思えばできたけど、恥をかかせて恨まれるのが怖くて、できませんでした。しかも勃起して、あの人の口の中で果ててしまった。自分が許せない」 後日、友人に打ち明け、嗚咽した。被害に遭って10数年。日本に戻ってきたタカシさんは念願の教授職が手の届くところにまできたが、心の傷は今も癒えない。