クレームのつもりが「カスハラ客」扱い? アンガーマネジメントのプロに聞く「怒りの伝え方」
●イラっとしたときに、理性が働くまでは約6秒
ーー怒りによる衝動的な行動をしないために、自分ができる努力はありますか。 「講習では『イラっとしたときに、理性が働くまでは約6秒』と伝えています。 6秒数えて我慢しましょう。ということではありません。6秒をやりすごすために、0から10まで怒りの点数をつけてみるんです。ゼロはまったく怒りを感じない状態、10は全身が震えるほどの人生最大の怒りです。『この怒りは何点だろう』と点数に意識を向けているうちに、6秒がたち怒りを客観視できます。 一番やってはいけないことは、怒りに任せて暴力的な行為に出たり、暴言をはいたりすることです。これは当然カスハラに該当しますし、後悔する人もいるでしょう」 ――海外でカスハラのようなケースはあまりないと聞きます。 「海外はサービスを提供する側とお客さんが対等で、背景として人権尊重の意識や、リクエストの伝え方の上手さがあるのだと思っています。 一方、日本は『お客様は神様』という言葉が誤った解釈で広がっていて、サービス業の人はお客さんのいいなりになるものだという間違った認識を持つ人がいます。サービス業向けの研修では『顧客満足というのは決して顧客の言いなりになることではありません』と伝えています」
●正当なクレームなのにカスハラ客扱い 本当のモンスターにしてしまう恐れ
――戸田さんは、カスハラ対策として、企業側へのアンガーマネジメント研修もしています。何か気付くことはありますか。 「顧客の怒りに振り回されると過剰に反応し、適切な判断ができなくなる人や、お客さんが怒っていると思った瞬間に恐怖を感じる人がいます。 適切な判断ができなくなると、実は正当なクレームなのに、カスハラと分類する人がいます。そうすると『あの人、カスハラのお客さんです』と上司に引き継ぐ。上司が二次対応で、カスハラ客として対応したら、カスハラ客として扱われたことにお客さまが怒り、本当のモンスターになることがあるんです。名誉毀損などの法的な問題に発展するケースもあり、実際にそうした相談は何度も受けています。 職場でカスハラ被害にあって嫌な思いをしたから、客の立場になったときに感情を思い切りぶつけてしまうという人もいます。罪悪感を持ち、何とかしたいとトレーニングを受けに来るんです。 日本アンガーマネジメント協会が目指すのは、怒りの連鎖を断ち切ることです。顧客も事業者も自分の怒りをうまく扱えるようになれば、カスハラの連鎖はなくなると思っています」