18歳の遠藤航に衝撃「なかなかできない」 ユース時代で常人離れ、恩師が明かす“唯一無二”【インタビュー】
「彼は決してブレない」 曺監督が18歳の遠藤に見出した不動心
日本代表MF遠藤航は世界有数のビッグクラブであるイングランドの名門リバプールでプレーし、森保ジャパンではキャプテンとしてチームのまとめ役を担う。30歳を超えてプレミアリーグに初挑戦してレギュラーの座を勝ち取るなど、これまでに前例のないようなキャリアを歩んできた。出番を失うことがあっても、そのたびに自身の価値を証明し、定位置を掴み取ってきた彼は、いかにして世界のトップレベルで戦える選手になったのだろうか。湘南ベルマーレ時代にその才能を見出した曺貴裁監督(現京都サンガF.C.)は言う。彼のような“強賢い”選手はほかにいない――。その言葉の真意に迫る。(取材・文=石川遼) 【写真】「これは感動」「泣ける」 リバプール遠藤航にファンが掲げた横断幕 ◇ ◇ ◇ 日本代表がワールドカップアジア最終予選を戦っている10月の代表ウィーク期間中。京都を率いる曺監督のインタビュー中に、教え子である遠藤について質問を投げかけた。湘南時代にまだ10代だった遠藤をユースからトップチームに引き上げ、のちにキャプテンに任命した張本人に、現在の遠藤の姿はどのように写っているのか、と。 すると、指揮官は当時からベテラン選手のような振る舞いが印象的だと語る。 「これはよく言ってるんですけど、俺はまだ18歳だった彼にPKを蹴らせたんです。それはなぜかと言うと、彼は外しても何も動じないだろうなと思ったからなんです。動じていないフリをすることができる選手はほかにもいます。ただ、動じないようなフリをする選手というのは、そのあとにボールをもらわなくなるし、全部クリアしたり判断がバラバラになったりするんです。でも、彼にはそれがない。彼みたいにしようと思っても、なかなかできるものではないんですよ」 10代の時点ですでに備わっていたという何事にも動じない不動心。それはもちろん31歳となった今も変わらない。 遠藤はキャプテンを務めた前所属クラブのシュツットガルトでも、昨季からプレーするリバプールでも、加入当初は出場機会が得られない時期を経験している。しかし、着実に信頼を積み上げ、後にチームにとって欠かせない選手へと成長してきた。リバプールではアルネ・スロット監督の就任した今季は出番を急激に減らしているが、限られた出番のなかで監督が求める役割を遂行するため、ひたむきにハードワークを続けている。 外から見ている側として当然「リバプールに居場所はなくなってしまったのか」という不安が頭をよぎる。しかし、遠藤はまるで他人事のように自身の置かれた立場を冷静に見つめている。 「ちょうど昨年の終わり頃、彼に会いにイングランドに試合を見に行って、その時もゆっくり話したんですけど、今の彼の立ち位置は世界で一番レベルの高いリーグの中でビッグ4とかビッグ6と言われるようなクラブに所属していて、いわば誰もが目指す最終地点に辿り着いてしまった。そこから考えるとほかに類似のクラブを探すのは難しい状況です。普通、あれほどのレベルに行ったら『自分はあの選手よりもここが劣っているからこれをしなきゃいけない』とか悪い意味でぶれたりすると思うんです。もちろんいい意味で言えばそれは変わろうとする心のことなんですけど、やっぱり彼は決してブレることがない」