社外品マフラーは違法か 排ガス規制、英国整備工場の「有罪」判決で矛盾が明らかに
法律の矛盾 当局はあいまいな返答
問題は、エンジンが高速回転したり、ターボチャージャーが作動したりすると、純正品の型式認証制限を超える排ガスを発生する可能性があるという点だ。 ウィルズ氏は本誌の取材で、「このため、車検の検査官がスポーツ触媒装着車の排ガスを作動範囲全体で適切に検査した場合、違法と判断されるのではないかと心配しています。誰かが起訴される前に、この車検と車両型式認証規制の矛盾を解決する必要があるのです」と語った。 本誌はDVSAに対し、スポーツ触媒装着車の型式認証状況について明らかにするよう求めた。広報担当者は、大気汚染物質の排出基準に適合しなくなるような改造を施した車両を公道で使用することは違反であり、したがって型式認証の制限に適合していないと判明した車両は違法となる可能性があると述べた。 しかし、1台ずつすべての車両が型式認証されているわけではないので、例えば、実際に公道を走っている車両の排ガスが型式認証の際と同じ方法で測定されることは「非常にまれ」であるという。 「メーカーはすべての車両を型式認証するのではなく、車両認証機関(VCA)にさまざまな車両を提出し、試験と認証を受けます。車検では、3年目以降のすべての車両が、型式認証基準に沿った要求基準を満たしていることを保証します。DVSAは、車両が型式認証基準を満たしているかどうかをチェックするために市場監視を実施しています」 DVSAのコメントに対し、ウィルズ氏は苦言を呈した。 「DVSAは、一方では型式認証の規制を満たさなければならないと言いながら、他方では試験が異なり、すべての車両が型式認証されているわけではないので、チェックすることはほとんどないと言っています。このため、自分のクルマが車検に合格していても、排ガス規制違反でDVSAに起訴される可能性があるということをドライバーは覚えておかないといけません」
メーカーも迷う? 不明確な境界線
本誌は英国でスポーツ触媒を販売する複数のアフターマーケット品メーカーに問い合わせたが、いずれも自社の置かれた立場は不明確であるとしている。 あるメーカーの広報担当者は、「スポーツ触媒はグレーゾーンです。当社の製品は法的規制値を遵守していますが、エンジンの回転域を上げると規制値が変わります。AETモータースポーツ社に関する最近のニュースを受け、販売資料の文言を改訂します」と語った。 英国のアフターマーケット業界団体であるPAAA(Performance Automotive Aftermarket Association)の広報担当者は、DVSAと協力して、メーカー、ディストリビューター、小売業者といった各会員の立場を明確にしていると述べた。 DVSAは、消費者が良質なアフターマーケット品を選べるようにスマート(Smart)マークを導入した。安全で、公道走行に適している製品に適用される。「我々は、消費者が十分な情報を得た上で選択できるようにしようとしている」と広報担当者は語った。 型式認証試験は、自動車が1kmあたり何グラムのCO2を排出するかを測定する室内試験である。英国ではVCAまたは他のEU当局によって実施される。試験では、排ガスに含まれる炭化水素、CO、NOx、その他のガスや微粒子を測定する。試験は特定の走行条件下で行われるため、結果を車両間で比較することができる。 一方、英国の車検制度はMOTと呼ばれ、公道で使用中の車両に対して実施される。排ガス中のCO2量を100万分の1として測定し、排ガス総量に対する割合で数値化する。基本試験は、高速アイドリング(2500~3000rpm)と通常アイドリング(450~1500rpm)で実施される。触媒コンバーターを搭載していても基本試験が不合格の場合は、徹底的な排ガス試験が実施される。
ジョン・エバンス(執筆) 林汰久也(翻訳)