田内学氏「中卒そば屋の父から東大に行けと言われ」…ゴールドマンサックスを41歳で「本の執筆のため退職」の真意
有名な金融機関を41歳で退職し、本を執筆。『きみのお金は誰のため』がベストセラーの田内学さんにインタビュー。【本記事はアエラ増刊「AERA Money 2024秋冬号」から抜粋しています】 【写真】「きみのお金は誰のため」著者、田内学さんのナイスショットはこちら! 2023年10月に発売された田内学さんの2作目の著書『きみのお金は誰のため』(東洋経済新報社)は25万部超の大ヒットとなった。 この本の主人公は中学2年生の男の子、優斗だ。投資銀行で働く七海とともに「ボス」と呼ばれる謎の富豪からお金や世の中の仕組みを学ぶ。 「お金自体には価値がない」「お金で解決できる問題はない」「みんなでお金を貯めても意味がない」など。いくつもの「常識」を覆しながら、物語は展開していく。 作中で筆者が最も印象に残ったのは「問題なのは、『社会が悪い』と思うことや」というボスの言葉だ。 「物価が上がって生活費が足りない」「国が悪い(税金が高い)」「円安のせい」「働きたくても働けない」……と、SNSなどでは不平不満が渦巻いている。 「もちろん不安の背景には個々の事情がありますが、『社会が悪い』という考えが最終的に何をもたらすかを説明したかった。 僕らは社会の中で生きています。では社会って自分たちがつくるのか、誰かに与えられるのか。その認識の違いは大きい」 ■不安をあおって売る 日本経済を振り返りつつ話を続ける。 「戦後復興期はモノが足りなかった。高度成長期は『自家用車が欲しい、便利な家電も欲しい』などの需要が激増した。 今はモノがあふれている。だから不安をあおり商品やサービスを売るケースが増えました」 平成バブル以降の失われた30年、不安をあおって需要を無理やり引っ張り出すマーケティング手法が広がった。 「これまでの間、『日本経済は成熟したから新しい商品が出てこない』と、それっぽい説明がされてきました。 『成熟してしまったから、限られたパイを奪い合うしかないのである』と」 日本経済は成熟したと言われたら「なるほどそうか」と思ってしまいそうだが。