『トランスフォーマー/ONE』 ジョシュ・クーリー監督 おなじみの世界の「起源」を描く喜び【Director’s Interview Vol.433】
『十戒』や『ベン・ハー』を意識したドラマ作り
Q:人間に比べると、トランスフォーマーの歴史はいくらでも拡張できそうですよね。 クーリー:彼らは何百万年も生きることだって可能です。ゆっくりとした時間の流れなので、いろいろ描けますよね(笑)。 Q:あなたがプロジェクトに入って、ストーリーや作品のムードが変わったりしたのでしょうか。 クーリー:最初に読んだ脚本はややコメディ調で、多少の違和感もありました。ただ、オプティマスプライムとメガトロンが固い友情で結ばれ、最終的に別々の道を進んで私たちの知っているキャラクターになるという、はっきりしたアーク(成長曲線)は存在していたのです。その部分を遵守すれば、力強い物語が完成できるという自信がありました。そこで『十戒』(56)や『ベン・ハー』(59)といった古典的名作から、『X-メン』(00)のようなヒーロー映画まで、同じアークに則ったものを参考にしたのです。結果的に彼らの強い関係性が、ストーリー構築のうえで大きな役割を果たしました。 Q:『X-メン』は何となくわかりますが、『十戒』や『ベン・ハー』というのは意外ですね。 クーリー:壮大な叙事詩を描く意識がありました。トランスフォーマーたちは現実には存在しない、伝説的なキャラクターであり、地球に来た時もどこか神のような存在感を放っています。ですから私は彼らの“大きさ”を頭に入れながら、地球とは何もかもサイズの異なる惑星の風景を表現しようとしました。その“感覚”だけでも映像で伝えられたらと……。スケール感という意味では『アラビアのロレンス』(62)や、(何度か映画化されたフランク・ハンバートの)「デューン」の世界に近づけたかったのです。 Q:そのような世界観に従って、監督として脚本を修正していったのですね。 クーリー:監督の立場から脚本を積極的に変更していく姿勢は、これまでのアニメーション作品でも意識してきたことです。単に脚本どおりの作品を目指すのではなく、つねに冷静に俯瞰し、どうすればもっとうまくいくかを考え、時には不要なパートを削るなどして脚本を書き直すわけです。これは多くの監督がやっていること。今回、このプロセスで留意したのは、いかにしてトランスフォーマー作品らしく仕上げるか。ですから脚本を手直しするのは、子供時代にアニメを観て、おもちゃで遊んだ感覚と似ていました。
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