ファミリーミュージカル「えんとつ町のプペル」は、何もかもが規格外! 予算はどう回収する? 発明的「打ち手」にたどり着いた、西野亮廣の思考回路とは?
ロウソクのニーズが高まった理由がまさに『意味のイノベーション』
その時に考えたのが『意味のイノベーション』で、これは凄く有名な話なのですが…ロウソクって今、若干成長産業なんですって。 大昔はロウソクが無かったら夜の暗さを凌げなかったわけですが、ロウソクよりも明るくて、そして安定感のある「電気」が出てきたら、やっぱりロウソクはオワコンになっちゃいました。 ところが、デスクライトからスタンドライトからスマホやパソコンの液晶から、安定的に明るさを作ってくれるアレやコレやが出てきた時に、ロウソク人気が息を吹き返すんです。 ここにきてロウソクのニーズが高まった理由がまさに『意味のイノベーション』で、ロウソクの意味が「手元を明るくするもの」から「ぬくもりを感じさせるもの」になったんです。 今、ロウソクを見て、「ロウソクの明かりは弱いなぁ」とはならないじゃないですか? むしろ、その「暗さ」や「ゆらぎ」が心に落ち着きを与えてくれるおかげで、僕らのキャンドル・ジュンが誕生しました。 ロウソクは機能商品から、意味商品に変わって、価値が発生したわけですね。
名前(意味)を変えただけで、価値が生まれる
この『意味のイノベーション』を劇場の客席でも使えると思っていて、「ステージが観やすい席か否か?」という機能で議論してしまうと、そりゃS席が一番良くて、A席、B席…見切れ席という順番に順位がついてしまうんです。 結果、「見切れ席=ちょっと残念」となるわけですが、今回のファミリーミュージカル『えんとつ町のプペル』では、ラストシーンで客席全体が星空になるんです。 こんなことをする人達、世界のどこにもいないので、ちょっとイメージつかないかもしれませんが、とにかく客席全体が星空になるんです。 で、面白いことに、この星空は、三階のサイドの見切れ席と、いつもはデッドスペースとしてお客さんを入れていないボックス席が一番綺麗に見えるんです。 SS席よりも、普段は「見切れ席」とされてしまっているこの席の方が圧倒的に綺麗に見えるんですね。 そう考えると、三階のサイドの見切れ席を『STAR VIEW(星見席)』として、三階のステージに最も近いデッドスペースを『STAR TERRACE(星見桟敷)』として売り出せば、同じ値段でも、「ここはステージが見れない席じゃなくて、星が見れる席なんだ」となって、すっごくお得感が出る。 席の形を変えたわけでも、値段を変えたわけでもなく、ただ、名前(意味)を変えただけで、価値が生まれる…という話です。 きっと、僕や皆さんが手掛けているサービスの中には、たったこんなことで取りこぼしている満足度があると思うので、一度、自分が取り扱っている商品の『意味』について考えてみてください。 ファミリーミュージカル『えんとつ町のプペル』の第一チケット(2025年8月9日~11日)の『STAR VIEW(星見席)』と『STAR TERRACE(星見桟敷)』は近々コッソリと販売を開始しようと思っているので、今後のVoicyは逃さずに聴いてください。 この席、本当に超オススメです。 西野亮廣/Akihiro Nishino 1980年生まれ。芸人・絵本作家。モノクロのペン1本で描いた絵本に『Dr.インクの星空キネマ』『ジップ&キャンディ ロボットたちのクリスマス』『オルゴールワールド』。完全分業制によるオールカラーの絵本に『えんとつ町のプペル』『ほんやのポンチョ』『チックタック~約束の時計台~』。小説に『グッド・コマーシャル』。ビジネス書に『魔法のコンパス』『革命のファンファーレ』『新世界』。共著として『バカとつき合うな』。製作総指揮を務めた「映画 えんとつ町のプペル」は、映画デビュー作にして動員196万人、興行収入27億円突破、第44回日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞受賞という異例の快挙を果たす。そのほか「アヌシー国際アニメーション映画祭2021」の長編映画コンペティション部門にノミネート、ロッテルダム国際映画祭クロージング作品として上映、第24回上海国際映画祭インターナショナル・パノラマ部門へ正式招待されるなど、海外でも注目を集めている。また「えんとつ町のプペル」は、ミュージカルや歌舞伎にもなっている。