倉本聰が記者に「恥を知りなさい」と怒った理由。Netflix 岡野真紀子プロデューサーに聞く、映像業界の女性20年
倉本聰が記者に怒った理由
── 実際にどんなシーンでそう感じられましたか。 岡野:例えば、脚本家の内館牧子さんとの打ち合わせの時でしょうか。 その場には男性陣しかおらず、内館さんが「ターゲットはあなたたちじゃない。私のドラマを見るような若い世代の女性スタッフはいないのか」とおっしゃったらしく、私が呼ばれて。 「今のあなたたちはどういう恋をして、どういうところに感動して共感するの?」と意見を聞かれました。 当時はアシスタントプロデューサー、といってもアシスタントのアシスタントぐらいの感じだったのですが……先陣を切って走ってらっしゃる方が意見を吸い上げてくれたのは嬉しかったですね。 ── それは印象的ですね。男性優位だった現場の雰囲気も変わっていきそうです。 岡野:それともう一つ、『北の国から』で知られる脚本家の倉本聰さんの作品を2012年にプロデュースさせていただいた時のことです。 ある新聞社からの取材で、倉本さんはインタビューを受けることになり、私も同行しました。すると、記者が倉本さんに「今どきの若い女の子とのお仕事はどうですか」と笑いながら聞いたんです。そうしたら先生、怒って立ち上がられて。 「きみ、失礼じゃないか! 僕は性別や年齢関係なく、 脚本家とプロデューサーという立場で対等に仕事をしているんだ。今時の若い女の子だと思ったことは一度もない。メディア人として恥を知りなさい」と。その時私は、もう、本当にかっこいいと思って(笑) ── それは本当にかっこいいです(笑)。 岡野:あの後、私が倉本先生に誓ったのは、 私が将来もっと立場のある存在になれたら、絶対先生みたいに若い子たちを守ってあげたいということでした。 ── 業界のトップランナーの方々が変化を牽引してくれていたんですね。 岡野:それは大いにあります。同時に、ドラマの視聴者だった女性たちが、どんどん業界に入ってきたことも大きいです。その結果、産育休だったり、体力差をどうサポートし合っていくかを考えるフェーズに入ったように感じます。