トランプ新政権で「オバマ・ケア」はどうなる? その成果は
修正した上で継続も検討?
2016年の大統領選挙に際して、オバマ・ケアに対するトランプの立場は一貫していませんでした。トランプは、オバマ・ケアに一定の意義を認めたうえで、もっとうまくやる方法があるという言い方をしたこともありました。しかし、選挙戦が終盤に差し掛かると、オバマ・ケアはひどい制度だとして即時撤廃を主張するようになりました。 アメリカでは法律が制定されるためには、連邦議会の上下両院が同じ法案を通過させた上で、大統領の承認を得る必要があるので、オバマ・ケアの行方を考える上では連邦議会の意向に注目することも必要です。今回の選挙で共和党が上下両院の多数を握ることになりましたが、その主流派はオバマ・ケアに批判的で、例えば上院のマコネル院内総務は、選挙後、オバマ・ケア廃止の優先順位は高いと明言しました。 しかし、トランプは初めてオバマ大統領と面会した後のインタビューで再度立場を転換し、オバマ・ケアを修正した上で継続することも検討すると表明しました。特に、既往症に基づく保険加入の拒否禁止や、親の保険で26歳までの子どもをカバーできる条項などは「とても好きだ」と発言しています。このような発言に、共和党主流派は困惑していることでしょう。 2016年の選挙では、トランプと共和党主流派が異なる政策を掲げて選挙戦を展開するとともに、時に両者の対立が顕在化しました。トランプと議会はどのような関係に立つべきか、互いに探りを入れている段階かと思います。新政権でオバマ・ケアがどうなるかは残念ながら今の段階では予想がつきません。今後の行方に注目したいと思います。
-------------------------------------- ■西山隆行(にしやま・たかゆき) 成蹊大学教授。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了、博士(法学)。甲南大学教授を経て現職。主著に『移民大国アメリカ』(筑摩書房、2016年)、『アメリカ政治』(三修社、2014年)、『アメリカ型福祉国家と都市政治』(東京大学出版会、2008年)など