「夢のプリンター」が「悪魔のプリンター」にも 3Dプリンター犯罪悪用の怖さ
実物のデジタルデータを元に、樹脂で本物そっくりの立体物をつくることができるのが、今話題の3Dプリンター。部品の製造業をはじめ、建築や医療分野でも徐々に活用され始めた。3Dプリンターだと金型をつくる必要はない。また開発期間の短縮やコストの削減にもなる。 家庭用3Dプリンターも販売されており、スマホ・携帯のカバーやコーヒーカップ、スプーンといった日用品も簡単に製作できる。業務用は数百万円もするが、家庭用だと5万円くらいから。最近では3万円台の家庭用3Dプリンターが登場した。 イギリスの調査会社ジュニパー・リサーチは、2018年までに世界中で家庭用3Dプリンターが100万台以上出荷されると試算。経済産業省では、平成32(2020)年には世界全体で22兆円近い経済効果あると見込んでいる。この3Dプリンターには安倍政権も乗り気で、26年度予算で40億円の開発費を計上したほど。まさに「夢のプリンター」だが、危険性も少なくない。
米テキサス州の非営利団体「ディフェンス・ディストリビューテッド」は昨年5月、世界初の3Dプリント銃「リベレーター」の発砲に成功。しかも、その3Dデータをネット上で公開、欧米を中心に80万件近くダウンロードされ、日本から6万件もアップロードされたという。 そのうちの1人が、神奈川県川崎市に住む20代の大学職員だった。 5月8日、3Dプリンターで製造した殺傷能力のある拳銃を所持したとして、銃刀法違反(所持)の容疑で神奈川県警に逮捕されたのである。自宅から3Dプリンターで製造したとみられる樹脂製の拳銃5丁が押収され、うち2丁に殺傷能力があることが判明した。
金属探知機が検知せず、国会へも持ち込めた
各国の治安関係者が警戒を強めているのは、100%樹脂製であれば空港の金属探知機でも検知できないことだ。金属探知機をパスした後、各部品使って拳銃を組み立てることも可能である。昨年7月、イスラエルのテレビ局スタッフが、製作した「リベレーター」を金属探知機も通過して国会に持ち込み、セキュリティの不備を証明した。 米上院は昨年12月、金属探知機で検知できない銃器の製造・所有を禁じた「検知されない銃器法」の期限を10年延長する法案を可決する。しかし、一部でも着脱可能な金属部品を使った場合、「リベレーター」は同法に違反しない。撃針に普通の釘を使っているからだ。