「視聴者目線で見たことがない作品を作りたかった」Netflixシリーズ『地面師たち』大根仁監督インタビュー
神は細部に宿る
―――本作では、電気グルーヴの石野卓球さんが音楽を担当されています。石野さんは、本作が初の劇伴音楽とのことですが、どういった理由から起用されたのでしょうか。 「電気グルーヴは、前身バンド『人生』からのファンで、2015年には『DENKI GROOVE THE MOVIE? ~石野卓球とピエール瀧~』という映画も作っています。 特に卓球さんは、電気グルーヴと並行して、ソロ活動も行っていて、いつか劇中音楽をやってもらいたいと思っていたので、今回お声がけさせていただきました」 ―――本作は、インティマシー・コーディネーターの浅田智穂さんも参加されています。浅田さんとは、ドラマ『エルピス-希望、あるいは災い-』(2022)からのタッグですが、参加されたことで現場に変化はありますか。 「とてもやりやすかったですね。当然、セクシャルなシーンでは、以前から役者へのケアをおこなってきましたが、浅田さんがスタッフと役者の橋渡しをしてくれることで、よりスムーズに撮影を進められるようになりました。 それから、浅田さんは、監督がどんな絵を撮りたいかを念頭に考えてくださるんです。今回も、僕が及び腰のシーンでも色々提案してくださって、描写がより深まりました」 ―――また、カメラマンには、阿藤正一さんが参加されていますね。阿藤さんは、20年の映画『SUNNY-強い気持ち・強い愛-』からのタッグですが、大根監督からお願いされたのでしょうか。 「そうですね。阿藤さんとはここ5~6年、CMでご一緒させているのですが、わざわざ説明しなくても、どんなショットやアングルが欲しいのか分かってくれるんです。 ただ、今回の作品は、シーンごとのルックの違いがかなりキモになると思っていたので、事前の打ち合わせはかなり綿密に行いました」 ―――具体的には、どういった点を話し合われたのでしょうか。 「シーンごとのルックの差別化ですね。例えば、地面師集団のシーンでは、犯罪サスペンスらしくケレン味たっぷりのルックに、石洋ハウスのシーンではリアリティのあるルック、警察のシーンはクールなトーンといったような。 こうして、映像のトーンを差別化することで、事件そのもののつかみどころのなさを表現できるんですよね。あとはシーンにカメラワークやレンズの使い方を変えたり、ショットによっては特殊なレンズを使ったり」 ーーそのあたりのこだわりも、何回か繰り返しみているうちにわかってくるのかもしれないですね。 「そうですね。ただ、そういったこだわりは、映像に詳しい方が気づいてくれればそれでいいと思っていて、まずは何より作品そのものを楽しんでもらいたいですね」