坂東祐大×角野隼斗が音楽談議。「日本と海外のコンサートホールの違い」で盛り上がる
現代音楽の今
続けて坂東から、現代音楽の変容について聞いた。 角野:クラシックを演奏するにあたって今の曲を演奏することもあるんですね。20世紀後半の曲に比べると、21世紀の曲って取っ付きやすさを感じるんですね。ある種のモダンさといいますか、それはおそらくクラシック以外のところからも影響を受けているのかなと思っているのですが、どういう風に現代音楽は変わっているのでしょうか? 坂東:ざっくり言うと、今って完全にマルチバースといいますか、一人一言語って感じなんですよ。大きな潮流があるっちゃあるんだけれども、国、地域、学んだ環境といったいろんなシーンによって(変わる)。たとえば日本だと、現代音楽をやっている作曲家っていろんな国に留学に行くじゃないですか。そうなると、藝大を出たあとに同じ現代音楽をやったとしても、人によって全然やっていることが違うんですよ。これはそういうものだと思っていて、統合する必要もまったくないと思っています。(現代音楽は)それぞれの面白い作家性を楽しむ分野って感じですね。ハマるとすごくディグり(探り)甲斐があって面白いと思いますね。演奏するのはめちゃくちゃ大変だと思いますけども(笑)。 角野:基本的にそういう傾向がありますよね(笑)。
「日本のホールだとさせてくれない」こと
番組では、『花火 - ピアノとオーケストラのための協奏曲 Scene 1:Introduction(feat. 永野英樹、新日本フィルハーモニー交響楽団、杉山洋一) 』をオンエアした。 角野:この曲、すごく面白いですね。調律をあえて狂わせていますか? 坂東:そうなんですよね。ピアノって、たとえばドだとだいたい3本の弦が張っていますよね。そのうちの1本だけ狂わせると共鳴がズレちゃうんですけど、その調整を7つの音にしてあります。 角野:88鍵のうちの7つだけズラしているんですね。 坂東:本当はもともとプリペアド・ピアノ(弦にさまざまなものを挟んで音色を変えるピアノ)をやりたかったんですけど、日本のホールだとさせてくれないんですよね(笑)。 角野:そうなんですよ(笑)! それで僕はコンサートでプライベートのピアノを持っていってプリペアドっぽいことをやりました。 坂東:消しゴムとか挟むと怒られますからね。面白い奏法っていっぱいあるんですけど、それを組み合わせてたりするんですよ。消しゴムを挟んでここだけボルトを入れ、定規でガリっとする、みたいなことは絶対日本でさせてくれません(笑)。日本のホールだと調律師の方がすごくしっかり管理されているので、それはいいことだと思います。 角野:そうですね。海外のほうがちょっと緩いなと思ったことはあります。演出のスモークって、日本だとピアノに悪影響があるからととても厳しいんですよ。だけど、ヨーロッパの撮影で使わせてもらったとき、誰もそんなことを気にすらしなさそうな雰囲気でした。 坂東:(笑)。いつか角野さんもこの曲を弾いてみてください。 角野:弾いてみたいですけど、譜読みするのにどれぐらいの時間がかかるだろう(笑)。