『広重ブルー -世界を魅了した青』太田記念美術館で 「ベロ藍」と呼ばれる絵具を用いた美しい青の表現に注目
風景画の巨匠として知られる浮世絵師・歌川広重(1797-1858)の作品のなかでも、「ベロ藍」と呼ばれる青色の絵具を用いた名作を中心に紹介し、その青の魅力に迫る展覧会が、東京・原宿の太田記念美術館で、10月5日(土)から12月8日(日)まで開催される。 【全ての画像】歌川広重《東都名所 高輪之明月》ほか(全10枚) 「ベロ藍」は、ドイツ(当時はプロイセン)のベルリンで発見されたことから、「プルシアンブルー」「ベルリンブルー」と呼ばれた染料のこと。オランダ船で運ばれ、中国で安価に生産されるようになると、1830年頃から浮世絵に用いられ始めた。従来の藍とは異なる美しさに触発された絵師たちが、その深く美しい青を駆使して風景画を描くようになり、当時30代半ばだった広重も、このベロ藍との出会いから風景画に開眼したという。刻々と変わる空模様や水面を繊細に表現して人気絵師となった広重は、詩情あふれる風景画の名作を晩年に至るまで続々と生み出して、浮世絵界に不動の地位を築いたのだった。 同展では、広重の風景画における最初のヒット作《東都名所》(《一幽斎がき東都名所》)から、出世作の《東海道 五拾三次之内》(保永堂版)、晩年の大作《名所江戸百景》まで、美しい青に彩られた各時代の名作が並ぶ。渦巻く海、うねる川の流れ、静かな水面など、多彩な表情を見せる水辺とその上に広がる空の情景を、ぼかし等の技法を用いて巧みに表現した作品群は、広重の青色に対するこだわりを感じさせてくれるとともに、当時の摺師たちの卓抜した技術も見せてくれる。 同展のもうひとつの見どころは、ベロ藍の流行を背景として生まれた他の絵師の作品も登場すること。北斎の《冨嶽三十六景》をはじめ、溪斎英泉、歌川国芳など個性あふれる絵師たちがベロ藍に触発されて、それぞれの美しい青色の再現に取り組んできた。浮世絵界の「青の時代」を築いた広重と他の絵師たちの作風を見比べるのも興味深いところだ。 同展ではまた、風景画を多く手掛ける以前の広重作品も紹介される。ベロ藍が登場し、風景画に専念していなければ、広重はどんな絵師になっていたのだろうか? そんな想像をしながら、広重初期の美人画や役者絵、武者絵を見直してみてはいかがだろう。 なお、会期は前後期に分かれ、全作品が展示替えとなる。前期は11月4日まで、後期は11月9日からと、展示替えの休館日があるのでご留意を。 <開催概要> 『広重ブルー -世界を魅了した青』 会期:2024年10月5日(土)~12月8日(日) ※前後期で全点展示替え 会場:太田記念美術館