人生の「大きな賭け」を大成功させる4つのルール
2.シンプルな質問をする
解決策を模索しているときは、シンプルな質問をすると、複雑な状況下でも道が切り開かれ、必要な答えへとたどり着くことができます。 ビル・ゲイツ氏とメリンダ・ゲイツ氏は、共同で財団を立ち上げようとしていたとき、ニューヨーク・タイムズ紙でロタウイルスに関する記事を目にしました。ロタウイルスは下痢を引き起こす感染症で、幼児がよくかかります。 当時のアメリカでは、ロタウイルスが原因で死亡する子どもは、いたとしてもごくわずかでした。しかし貧しい国々では、年間60万人もの子どもがロタウイルスで命を落としていました。 それからまもなくして2人は、7億5000万ドルの資金を投じ、途上国での予防接種率向上を目指す国際組織Gaviワクチンアライアンスの設立を支援しました。目標は、年間で定期予防接種を一度も受けたことのない子どもたち5000万人にワクチンを提供することです。 この投資を行なったことで浮き彫りになったのが、世界全体のワクチンシステムの複雑さです。ワクチン供給側では、多国籍企業や国際機関、知的財産法、多種多様なポリシーが関係してきます。 さらに、ワクチンを実際に提供するうえでは、支援団体や医療システム、運輸、冷蔵、記録管理といったさまざまな要素がパッチワークのように絡み合います。 こうした複雑さのせいで、何の方策も行なわれなかったり、活動が不十分になったりすることが多々あります。しかしビル・ゲイツ氏は、シンプルな質問を問いかけることで、こうした複雑な状況を打開しました。 まず、子ども1人あたりのワクチン接種コストはいくらなのか、ひいては、子ども全員に接種した場合の総コストはいくらになるのか、という質問を繰り返しました。それに対する答えを解明しようとするなかで、システムの欠陥が浮かび上がってきましたが、答えは見つかりました。 貧しい国で暮らす子ども1人あたりのワクチン接種コストは、約84ドルです。予想より高めでしたが、これで進むべき道筋が見えはじめました。 そして、さらなる質問を投げかけるうちに、子どもたちにワクチンを接種するには、多額の初期資本を、持続可能なかたちで投じる手段を見つける必要があることが明らかになったのです。 そこでGAVIは、パートナー組織と協力し、ワクチン債を発行しました。そうして、多数の国々や国連機関、世界中のワクチンメーカーの努力の甲斐あって、GAVIは、過去20年で9億8000万人以上の子どもたちにワクチンを接種し、1600万人の子どもの命を救ってきました。 ビル・ゲイツ氏は、のちにこう語っています。 「変化を妨げているのは、思いやりがなさすぎることではなく、複雑すぎることです」。 シンプルな質問を投げかけることで、「大きな賭け」の中心をなす、革新的で斬新な目標に集中し続けることが可能になります。 それと同時に、シンプルな質問に対する答えが見つかれば、たとえそれが不完全であっても、目標達成までの道筋を示したロードマップを描くことができます。