「103万円の壁」動く 繁忙期に学生バイト働けるように 社会保険の壁は残る 経済対策
22日に閣議決定された総合経済対策に、年収103万円を超えると所得税が生じる「103万円の壁」対策が明記され、手取り増と就労拡大を妨げてきた壁がいよいよ動き出す。働く人の手取りが増えれば、消費も活発になる。だが、103万円を突破しても、年収の壁は残る。これを機に、社会保障制度の見直しを含む抜本的な是正につなげることが期待される。 【グラフィックで解説】「年収の壁」は103万円以外にも… 103万円の壁を巡り、経済対策には「令和7年度税制改正の中で議論し引き上げる」と書き込まれた。国民民主党は非課税枠の178万円への上限引き上げを求めており、年末に向けた検討では具体的な引き上げ幅や財源確保が焦点となる。 引き上げで大きな恩恵を受けるのはアルバイトの学生だ。19~22歳の学生の場合、現在は年収103万円到達が見えてくると、扶養する親が63万円の「特定扶養控除」の適用を受け続けるため就業調整せざるを得ない。ただ、所得税の非課税枠と扶養控除の適用範囲をいずれも広げることで柔軟に働けるようになる。 アルバイトを雇う飲食店などにとっても朗報だ。特に年末の繁忙期の人繰りが容易になる。 ただ、年収の壁は103万円以外も存在する。このうち、年収が一定水準を超えると社会保険の加入が義務付けられて手取りが急減する「106万円の壁」と「130万円の壁」は、会社員や公務員の配偶者の扶養に入っているパート従業員にとって悩ましい問題だ。 106万円の壁の対象は、「事業所の従業員数が51人以上」「労働時間が週20時間以上」などの全ての条件を満たす場合に限られる。これに対し130万円の壁は事業所の従業員数などに関係なく、その他の全てのパート従業員が対象になる。 第一生命経済研究所の星野卓也主席エコノミストが、非課税枠が178万円に上がったときの手取りの増え方を試算したところ、「130万円の壁」対象者の場合、現在の年収が130万円なら手取りが2万円、150万円なら4万円、200万円なら13万円増える。 ただ、年収129万円なら4万円と、130万円よりも手取りの増え方が多く、壁を意識した働き控えがどこまで解消されるのかは不透明だ。
非課税枠の拡大について、星野氏は「インフレの経済が続けば、将来も非課税枠の拡大の検討が必要になる」として、公的年金のように物価変動に応じて自動的に調整する仕組みの導入を提案する。その上で、所得税の非課税枠を引き上げるだけでなく、社会保険を巡る社会保障制度の見直しがなければ「年収の壁問題の抜本解決にはならない」と語る。特に〝本丸〟は対象者が多い社会保障側の壁ともいわれ、来年以降も議論が続くことが期待されている。(米沢文)