医師に聞いた!糖尿病を「改善させる食事」と「悪化させる食事」
生活習慣を改善する「2つの食事」
生活習慣病がベースの糖尿病であれば、初期の頃に生活習慣を改善すれば十分に戻るチャンスがあります。中でも食事のコントロールが特に重要で、2つの食事が推奨されています。 1つ目は「地中海食」。野菜・ナッツ・種・全粒の穀物・豆などを中心に摂取し、油はオリーブオイルを使い、少量のワインを飲むといった食事です。 加工された食品、ファーストフードやジャンクフードなどはほとんどなく、全粒のホールフードの状態で摂取することが多いです。高温で加熱したり、油で炒めたり揚げたりするようなものもなく、生だったり、煮たり蒸したりといった料理が中心です。 地中海食を取ると、糖尿病だけではなく、心臓血管疾患・がん・肥満・肺疾患・認知機能の低下などのリスクも低くなったというデータもあります。 2つ目は「プレバイオティクスを多く含んだ食品を摂る」こと。プレバイオティクスとは、腸内細菌のエサとなるもの。サイリウムやバナナ、各種のオリゴ糖を含んだ食品を摂ることで、血糖値の上昇が抑えられます。 腸内細菌がプレバイオティクスをエサにすることで、短鎖脂肪酸が合成されます。短鎖脂肪酸は腸の栄養分であると同時に、脳内の炎症を取ることができ、腸内の炎症や体の炎症が取れると血糖値は安定します。 糖尿病の人は腸内の短鎖脂肪酸が低いことがわかっているので、それが増えることで、血糖コントロールが改善できるのです。
「動物性たんぱく質」の摂りすぎは危険
糖尿病を悪化させる原因として、動物性たんぱく質を摂りすぎることも指摘されています。 糖尿病をコントロールするために、低炭水化物食や糖質制限などがよく推奨されていますが、その代わりにたんぱく質はたくさん摂ってもいいと言われることがあります。 でも、高たんぱく質、特に動物性のたんぱく質を摂りすぎると、インスリン感受性が低下しますし、死亡リスクが上がるという研究結果も報告されています。 野菜をしっかりと摂りながらの低炭水化物食は、死亡率の低下や糖尿の改善といった研究結果があります。逆に、動物性のたんぱく質をたくさん摂って低炭水化物食をすると、心血管死亡・がん死亡のリスクが増加したという結果が出ています。 また、運動も取り入れないと糖尿病は改善しません。筋肉が血糖値をコントロールするための最大のバッファーの役割を果たしてくれるので、筋肉量をつけていかないと糖尿病は改善しにくいです。 体が悲鳴をあげてサインを出しているときは、生活習慣を変えなければいけないと強く認識すること。初期に対応することで長期的には体の回復力が働くようになります。 放置する期間が長いと、体が回復する能力を失い、どんどん病状が悪化してしまいます。健診に引っかかった初期の頃や病院に行き始めた頃に生活習慣の改善も行いましょう。 (TEXT:山田周平) ▼動画 https://youtu.be/7sOZHir78Mg 画像提供:Adobe Stock
石黒成治先生
消化器外科医、ヘルスコーチ。 1973年、名古屋市生まれ。1997年、名古屋大学医学部卒。国立がん研究センター中央病院で大腸癌外科治療のトレーニングを受ける。その後、名古屋大学医学部附属病院、愛知県がんセンター中央病院、愛知医科大学病院に勤務する。2018年から予防医療を行うヘルスコーチとしての活動を開始。腸内環境の改善法、薬に頼らない健康法の普及を目的に、メールマガジン、YouTube、Instagram、Facebookなどで知識、情報を分かりやすく発信している。Dr Ishiguro YouTubeチャンネル登録者数は37万人超(2024年1月時点)。