アメリカ最大プロレス団体でトップを獲ったイヨ・スカイが語るWWEの世界「生き残れるのはたった一握りなんです!」
イヨ WWEはベビーフェイスとヒールの対立が基本なので、ヒールの私にはブーイングの嵐。でも試合の私の一挙一動で、会場の空気が「イヨすげえ!」に変わっていって、「今、アメリカンドリームを掴んでいってるな」って手応えがありました。その後ベルトは失ったけど、私の支持率はバーンと上がりました! ――世界最大のWWEは選手数もケタ違いな中、日本人として成功するなんて、並大抵ではないですよ! イヨ これは日本人に限らず世界中の挑戦者に言えることですけど、WWEに入るまでは漕ぎつけられても生き残れる人はたった一握り。TVすら出られないままクビになったり、上に行っても登場できないまま去る人もいる。日々ふるいにかけられる環境で生き残れたことは「自分にしかない何かを持っている」という自信になっています。 トントン拍子で来ていたら、チャンピオンになってもこんなに感慨はない。人間は苦労して手に入れたものの方が大事なんだなって実感しました。すべての苦労の日々が今では愛おしいですね。 ――プロレス界でまさに大谷翔平級の活躍を見せるイヨ・スカイですが、日本の女子プロレス界を振り返って、感じる課題やこれからの期待はありますか? イヨ 今の日本の女子プロレスは、私がいた頃より圧倒的に選手数も増えてレベルが上がっていると思います。でもその中で問題点があるとしたら、選手のルックスや試合内容がみんな同じような理想系を追っているようにも見えるので、ひとつのショーとして大会を見終えたあとに、お客さんの印象に残らないものがでてきてしまうというところだと思います。 WWEには本当にさまざまなキャラクターのスーパースターがいて、そのどれもが洗練されているのですごく印象的です。最近RAWでThe Wyatt Sicksというユニットがデビューしたのですが、かつてないほど不気味でクールで、いま全米を大熱狂させています。 かわいいとか、強いとかのさらに先、もしくはまったく違ったものをきちんと表現できる選手や団体が今後増えてくれたら、日本プロレス界の全体的な面白さが何倍も増すと思います。 ――今やチャンピオンになり、すべてを手に入れたのでは? イヨ まだまだ! ようやくメインロースターになったばかりで、まだ道の途中。満足なんかしてません。もっとすごくなったイヨ・スカイとして、もう一度頂点に立ちます! ――では最後に、日本のファンにメッセージを! 日本のファンの皆さんのおかげで世界に旅立つことができ、今では世界中を飛び回り「イヨ・スカイ!」と熱烈に声を掛けてもらえています。「世界中」にはもちろん日本も含まれています。これからはもっと日本で試合する機会も増えると思うので、世界レベルに成長したイヨ・スカイに注目してください! ●イヨ・スカイ 1990年5月8日生まれ。2007年3月「紫雷イオ」としてデビュー。フリーで活動したのち12年からスターダム所属。15年度からは「女子プロレス大賞」を3年連続受賞するなど日本女子プロレス界を代表する存在に。18年8月WWE入団。22年「イヨ・スカイ」に改名してからは破竹の快進撃で23年8月にはWWE女子王座を獲得し、世界の頂点に立った。器械体操の経験を活かした得意技のムーンサルトプレスは"世界一"と称されるスゴ技 取材・文/明知真理子 撮影/山上徳幸 写真提供/マリーゴールド