決して簡単ではない“番手捲り”での優勝 初タイトルの北井佑季が見せた驚異的パフォーマンス/高松宮記念杯競輪・決勝
ゴール直前で、北井選手の直後にまで迫った古性選手が小林選手と接触して落車。そのあおりを受けた北井選手も落車してしまいますが…それでも、最後まで先頭を譲らずゴールラインを駆け抜けたのは、北井選手でした。外からジリジリと迫った和田選手が2着で、神奈川ワンツー決着。落車についての審議が長く続きましたが失格はなく、3着は古性選手、4着は小林選手で確定しています。
驚異的なパフォーマンスを発揮した北井
レース前の想定とほぼ同じ展開となり、3連単配当は1番人気の2,340円という堅い決着。しかし、この結果に至るまでの過程は、全選手がまさに“死力”を尽くした、本当に素晴らしいものでした。レースの「戦略と戦術」については南関東勢の完勝で、その成果としての神奈川ワンツーだったわけですが、この展開でこの結果をしっかり出せていること自体が、皆さんが思われる以上に並大抵のことではないのですよ。 勝つためにはこれしかない…と腹をくくって、事前に予想されたとおり、ラインから優勝者を出す走りに徹した郡司選手。しかし、郡司選手クラスが赤板から全開で逃げるとなると、番手にいる北井選手も、イメージ以上にスタミナを消耗します。追走しているだけで、脚を削られるんです。楽そうにみえてしまう「番手捲り」ですが、実際そんなことはなく、本当にキツいんですよ。 例えば、全盛期の私が「今日の北井選手と同じ走り」をしていたとしましょう。それで勝てるかといえば…残念ながら勝てません。10回やれば10回とも、和田選手に差されていたと断言できます。それくらいに、今日の北井選手がやった番手捲りはキツい。それを一発勝負で決めたのですから、北井選手がこのレースでいかに驚異的なパフォーマンスを発揮していたか、わかっていただけるのではないでしょうか。 赤板からの全力で最終1センター過ぎまで保たせた、郡司選手の強さも相当なもの。脇本選手を封殺して、この結果を作り出した“立役者”であったのは間違いありません。小林選手の動きによって、新山選手が自分のタイミングよりも早く仕掛けざるをえなかったのは南関東勢にとってラッキーでしたが、それ以外はすべて自分の力で切り拓いて、勝利をもぎ取っている。北井選手の優勝を、心の底から称賛したいですね。 あの苦しい展開から、見事な立ち回りで3着までもってきた古性選手の強さも、並大抵ではありません。小林選手も随所でいい判断、いい動きをしていて、近況でみせている強さが本物であることを改めて証明しています。年末のグランプリに向けた戦いは、まだ折り返し地点。現時点では確かに南関東が優勢ですが、他地区も黙ってはいませんからね。今後、さらなる熾烈な戦いが繰り広げられることを期待したいと思います。