決して簡単ではない“番手捲り”での優勝 初タイトルの北井佑季が見せた驚異的パフォーマンス/高松宮記念杯競輪・決勝
先頭誘導員が離れると同時に、早々と“全開”モードの戦いがスタート。脇本選手は赤板後の1センター過ぎに桑原選手の外まで進出しますが、先頭の郡司選手が素晴らしいかかりで逃げているのもあって、そこから先はなかなか前との差を詰められません。ほぼ変わらない隊列のままでレースは打鐘を迎えますが、ここでじつに巧い立ち回りをみせたのが、単騎の小林選手でした。 新山選手が脇本選手を意識して少し外を回ったところを、小林選手は空いた内を突いてスルスルと進出。打鐘後の2センターを回って最終ホームに帰ってきたところで、南関東勢の直後4番手を確保しました。そしてここで、早い仕掛けで脚をなくしてしまった脇本選手が戦線から離脱。古性選手が近畿勢の先頭となりますが、最終ホーム通過が8番手というかなり厳しい展開です。
そして、小林選手に内をしゃくられたことで、小林選手の「外併走」で最終ホームを通過するカタチとなってしまった新山選手も、苦しい態勢に。小林選手の後ろに入っての一列棒状ならば問題なかったのですが、自力に切り替えた古性選手が後ろから車間を詰めているのもあって、外で浮くカタチとなってしまいました。ならば…と覚悟を決めて、新山選手はここから前を捲りにいきます。 この新山選手の仕掛けに、後方の古性選手も連動。外から4車が前に襲いかかりますが、最終1コーナーに入る手前で、新山選手の動きを察知した北井選手が進路を外に出してブロック。そして最終1センターを回ったところで、郡司選手の脚色が鈍くなったのを察知した北井選手は、前へと踏んで番手から捲りにいきます。番手から力強く抜け出した北井選手に対して、仕掛けを合わされた側である新山選手の伸びはイマイチです。 ここで新山選手マークの桑原選手が離れてしまいますが、それを瞬時に察知した古性選手は、進路を内にきって小林選手の後ろにシフト。新山選手の捲りは不発に終わり、⑨⑧④⑦①という隊列で最終3コーナーに入ります。展開的には南関東勢が有利ですが、赤板から全力だった郡司選手の後ろを走っていたわけですから、番手から捲った北井選手もかなりキツい。ここからはもう、気力や底力の勝負です。 このままの隊列で最終2センターを回りますが、古性選手は小林選手の内に突っ込んで進路をこじ開けて、最後の直線に。先頭の北井選手は目の前に迫るタイトル獲得に向けて、最後の力を振り絞ります。北井選手マークの和田選手が外に出して差しにいきますが、一気に突き抜けるような勢いはなし。その後ろでは、小林選手と古性選手が内外で絡み合いながら、ジリジリと前に迫ります。