決して簡単ではない“番手捲り”での優勝 初タイトルの北井佑季が見せた驚異的パフォーマンス/高松宮記念杯競輪・決勝
そんな神奈川トリオは、決勝戦でも北井選手が番手という並びを選択。先頭は郡司選手で、3番手を和田選手が固めます。「ここで北井選手を優勝させたい」という、年末のKEIRINグランプリ(GI)まで見据えたシナリオの存在がハッキリと感じられる布陣。既にグランプリ出場を決めている郡司選手が、ここでラインから優勝者を出す走りに徹することは、想像に難しくありません。 地元地区である近畿勢は、脇本選手と古性選手、南修二選手(88期=大阪・42歳)の3名が勝ち上がり。三連覇のかかる古性選手は素晴らしい仕上がりで、脇本選手も持病である腰の痛みは出ていない様子です。南関東勢がこの並びを選んだ“意図”はわかっていますから、ここは青写真通りの走りをさせないことが求められてきますよね。その強力な機動力を生かして、主導権を奪いきりたいところです。 新山響平選手(107期=青森・30歳)は、桑原大志選手(80期=山口・48歳)と即席コンビを結成。郡司選手と脇本選手が前でやり合う展開にでもなれば、中団で立ち回る新山選手のもとに、絶好の展開が転がり込みます。しかも新山選手のデキのよさは、古性選手と並んで、このシリーズに出場した選手のなかでもトップクラス。展開さえ向けば、一気に突き抜けるシーンが十分に考えられます。 そして唯一の単騎が、ダービーに続き決勝戦進出を果たした小林泰正選手(113期=群馬・29歳)。先日には前橋記念で優勝と、勢いに乗っています。さすがにこの相手で単騎勝負となると分が悪いですが、巧い立ち回りで存在感を発揮してほしいところ。主導権を奪うラインの直後が取れれば、上位争いに持ち込める可能性はあります。どういう展開になるかを読む力が問われそうですね。
郡司の好調な飛び出し、突っ張り先行が濃厚に
では、そろそろ決勝戦の回顧に入りましょうか。レース開始を告げる号砲が鳴って、いい飛び出しをみせたのは3番車の郡司選手。スタートを取って、南関東勢の前受けが決まります。その後ろの4番手につけたのは新山選手で、単騎の小林選手が6番手。そして、後方7番手に近畿勢の先頭である脇本選手というのが、初手の並びです。この並びの南関東勢が前受けということは、突っ張り先行が濃厚ですよね。 脇本選手が後方から前を斬りにいっても、突っ張られる可能性のほうがはるかに高い。となれば、脇本選手このまま動かず、一気のカマシで勝負してくるでしょう。問題は、そのタイミングがどこなのか。青板(残り3周)では動きをみせなかった脇本選手ですが、赤板(残り2周)通過と同時に後方から一気に加速。前を捉まえにかかりますが、それに合わせて先頭の郡司選手も、躊躇なく全力で前へと踏み込みました。