英国を代表する作曲家ブリテンが世界平和を願って作った『戦争レクイエム』【クラシック今日は何の日?】
クラシックソムリエが語る「名曲物語365」
難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。
ブリテン『戦争レクイエム』 世界平和を願ったブリテンの思いがここに
今日5月30日は、20世紀英国を代表する作曲家ブリテン(1913~76)の『戦争レクイエム』初演日です。 エルガー、ヴォーン=ウィリアムズに続いて英国に登場したブリテンは、幅広い教養と繊細な感性を生かしたオペラなどの声楽作品を数多く残しています。そのブリテンが1962年に発表した『戦争レクイエム』は、第二次世界大戦におけるすべての犠牲者を追悼し、世界平和を願うために作曲された、管弦楽付きの合唱作品です。 初演は、1962年5月30日。空爆による破壊から再建されたロンドンのコヴェントリー大聖堂において行われています。翌63年には、ブリテン自身の指揮による“自作自演”のレコーディングが行われ、発売から1年で20万枚という破格の売上を記録。これは作品の重要性を象徴する出来事といえそうです。 そのブリテンは、1939年に日本政府から「皇紀2600年奉祝曲」を委嘱され『シンフォニア・ダ・レクイエム』を作曲します。この曲の日本初演は1956年2月18日。来日したブリテン指揮、NHK交響楽団の演奏で行われています。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。