自転車競技・史上最強の選手はオランダのラブレイセン、パリの地で日本代表が挑む世界のライバルたち
女子ケイリンは佐藤水菜に期待
女子ケイリンで佐藤水菜(25歳・神奈川=114期)の金メダル獲得が期待されている。ドイツのリーソフィー・フリードリヒやエマ・ヒンツェといった強豪がいて、地元開催になるフランスのマチルド・グロも相当な思いがあるだろう。 グロは短期登録制度でガールズケイリンを走っていて、まだ20歳にならないころで、未完成の感じがあった。ただ、その爆発力はパリ五輪に向けて、上向くばかり。強敵の1人だ。やはり、自国開催となると五輪はまた違うものになる。 東京大会を見ている時、カナダのジュネスト、ウクライナのスタリコワ、など東京前のワールドカップでは苦戦も目立っていた選手が抜群の仕上がりで活躍していた。スプリントで金メダルを手にしたカナダのケルシー・ミッチェルのように競技歴が浅い中で一気に輝いたケースもある。 佐藤と太田りゆ(29歳・埼玉=112期)が世界に衝撃を与える瞬間を待ちたい。
梶原悠未は金メダルのみ
女子オムニアムは梶原悠未(TeamYumi)が東京五輪銀メダルの上を目指す。「あの悔しさを…」。最後の4種目目のポイントレースでは落車してしまった。しかし、悲痛な表情ですぐに立ち上がりレースに復帰。あの時の表情は忘れられない。アメリカの女王・ジェニファー・バレンテを何としても倒したい。 男女マディソンはどこまで五輪の舞台で戦えるのか。日本チームとしてはマディソン挑戦の歴史は浅い。その中で出場権を得る成長ぶりは、これもまた衝撃。 海外のロックバンドに手の届かない憧れを持ってしまうように、マディソンを走る海外選手は別次元だと感じていた。だが今はそれはない。日本チームが刻むリズムと、実は攻撃的なビートが、渦巻く。それに加えて、最高の笑顔。
イギリスのジョセフ・トルーマンがチームスプリントに出場予定。トルーマンも短期登録制度で日本に来ている。彼も20歳になる前、の若いころだった。松戸競輪場の検車場で、所在なげに不安そうにしていた。 取材も長くなり、「海外の選手が来ると、日本の選手は厳しいよ」と嘆く声も聞く。だが、彼らとて…おそらく非常に閉鎖的に感じる空間で、言葉もあまり通じない。そこに、挑戦している。困難な局面に挑んでいる。何か、元気になってくれないか、と声をかけた。ジョセフ、なので、「Can I call you Joe?」。ジョーと呼んでいいかい、と前頭部が薄くなった日本人に声をかけられたトルーマンはキラリと瞳を輝かせて喜んでくれた。 すぐにジョーは日本になじみ、競技大会の取材に行くと、日本で買った軽自動車に乗っていた。小さな車の運転席で、天井に頭が突き刺さったまま手を振ってくれたシーンは面白かった。 正直な話、国籍を問わず誰が頑張って、どんな成績になってもいいと思っている。誰かが、どこかで、本当に必死で頑張って国を背負って、仲間や支えてくれる人たちのために戦っている…。本当にこれが正直な気持ちだ。 しかし!しかし!しかし!悔しい思いをしてきた、涙だけを流してきた先人たちのために、今回ばかりは日本人選手が、自転車競技のトラック種目で金メダルをつかんでほしい。世界の強豪たちを、倒してくれ! (文:東京スポーツ・前田睦生記者)