冬季五輪の一部北朝鮮との分散開催案をIOC歓迎も海外メディアは懸念
来年3月に韓国・平昌で行われる冬季五輪の一部競技を、北朝鮮で分散開催することの検討を韓国の文化体育観光相が表明したことを受けて、IOC(国際オリンピック委員会)がその議論を歓迎する声明を発表するなどしたが、韓国の選手団と共に海外メディアからも懸念する声が挙がっている。 カナダは冬季五輪の多くの種目でメダルを獲得している強豪国だが、そのカナダのトロントに拠点を置く「ザ・グローブ・アンド・メール」電子版が、「オリンピックの平和の枝を北朝鮮へと伸ばすことについて」という見出しで、キャサル・ケリー記者が執筆したコラムを掲載した。 記事では、リオ五輪に向けての北朝鮮の取り組み例を挙げて批判。 「リオ五輪の前、北朝鮮のリーダーである金正恩は5つの金メダルと合計で17個のメダルという目標を掲げた。2桁のメダルをとったことのないチームに対して不合理な要求である。予想通りに北朝鮮はリーダーの独善的な目標を成し遂げることに失敗した。期待通りのパフォーマンスができなかった選手の何人かは罰として鉱山で働かされるらしい。それが本当かどうかは別にして、何か不愉快なことだ。北朝鮮ほど、オリンピックの精神を表現するのにふさわしくない国は他にないだろう」 さらに北朝鮮のスポーツ報道についても疑念を投げかけた。 「北朝鮮のメディアはこれまでにも読者に誤解を与えるような報道をしてきた。競技がリアルタイムで放送されることはほとんどない。プロパガンダの価値を高めるために様々な手法で編集されている。2010年のFIFAワールドカップで北朝鮮が0-7で敗れた試合は途中から実況がなされなくなった。そして翌日の新聞には、スコアが掲載されていなかった」 ケリー記者は、北朝鮮のオリンピック選手を取り巻く状況は、世界から競技者が集い、最も高いレベルで友好的に競い合う環境からかけ離れていると指摘した。 「まだ何も決まってはいないが北朝鮮は国の唯一の観光地である馬息嶺(マシンニョン)スキー場で一部競技を開催するかもしれない。写真で見る限り、雪はあるが、映画のザ・シャイニングのようで恐ろしい。北朝鮮は何かを組織するのは得意ではないが、天候面ではミスはしないだろう」と、雪の心配がないことについては皮肉をこめて、こう表現した。 ケリー記者は、「全ての国はオリンピックで競い合う権利を持っている。しかし、全ての国がオリンピックをマーケティングの機会として使う価値があるわけではない。全ては北朝鮮と国際オリンピック委員会次第だ」と、開催国として北朝鮮がふさわしいかどうかを問いかけ、議論を歓迎する姿勢を示したIOCの姿勢も問いただしている。