M4チップ搭載の新型「MacBook Pro」は堅実な選択肢へと進化した1台だった 試して分かった違い
買い得感が増した地味だが堅実な選択肢
これまで、AppleはよくMacBook ProをWindows PCも合わせた全ノートPCの中で最高の性能を誇るとうたってきた。しかし、今回のMacBook Proに関しては「プロ向けノートブックの中で最も先進的なチップを搭載」と表現を濁している。 どの製品がそうかは分からないが、もしかしたらMacBook Proよりも高性能なノートPCが世界のどこかで発売されたのかもしれない。ただ世界最高性能の称号を得るノートPCを作ろうとすれば、やり方はいくらでもある。「世界最高性能」の称号を得る上では、価格や重量、バッテリー動作時間などは関係ないのだから、それらを犠牲にしてとにかく実績作り的に最高性能を詰め込めば良い。 だが、MacBook Proは決してそうしたアプローチで世界トップレベルのノートPCという称号を得てきたのではない。実際、最新モデルもやみくもに性能を詰め込むよりかは、常に製品全体としてのバランスを見ている印象を受ける。 MacBook Proシリーズは、ただプロセッサが速いだけでなくハイコントラストなHDR表示ができるディスプレイの性能、美しさ、見やすさの点でも最高峰だし、搭載している4基のスピーカーの音質も業界最高レベルで、スタジオ品質といわれる内蔵マイクなど、全てのスペックが一流でそういう意味でもバランスが取れているのだ(詳しく書くと記事が長くなるのでAppleの公式ページを参照してほしい)。 実はそんなMacBook Proに1個だけ「これはプロ品質なのか?」と言いたくなるとんでもない欠点もあるにはあった。内蔵のカメラが前モデルまで1080pつまり約200万画素の解像度だった。しかし、今回のモデルからは、これも約1200万画素に解像度アップして解消された。 連続ビデオ再生時の動作時間は最長24時間になった(これまでは最長18時間)。さらにM4 Pro/MaxモデルのUSB Type-C端子がThunderbolt 5対応になって、最大120Gbpsの転送速度を実現した(これまでは40Gbps)。そして外部ディスプレイも同時に2台(M4 Maxなら3台)扱えるようになった。 このようにプロセッサだけ極端に速くするようなことは行わず、常に全体のバランスを見ながら進化をしているのがMacBook Proで、その姿勢は今回のモデルでも変わらないが、先に順当進化と書いたが、2024年は例年に比べると進化の歩幅が大きめだ。 そんな大きめな進化があったにも関わらず、価格は据え置きなので、ドナルド・トランプの大統領再任で更なる円安がささやかれる中、かなり買い得感が高い印象がある。 特に強く感じるのが、M4 ProでもM4 Maxでもない無印のM4チップを搭載したベースモデルだろう。実は単にプロセッサをM4シリーズにしただけでなく、標準搭載のメモリ容量が8GBから16GBへと倍増したのだ。 従来のM3 MacBook Proを16GBにしようとすると+3万円ほどかかっていたので、3万円もお得になったと言えるかもしれない。 これまで2基しかなかったUSB Type-C端子が、Pro/Max仕様のプロセッサを搭載した上位モデル同様に3基に増えたり、これまで上位モデルでしか選べなかったスペースブラックが選べるようになったりもしている。 このような意味からも、古いMacBook Proを我慢して使い続けてきた人たちにとって2024年は買い替えの良いタイミングのように思える。 いや、それだけではない。本来はMacBook Airの方がふさわしいユーザーたちにとっても、少し背伸びして高級モデルを買うメリットがある。その分、長く使い続けられることが多いのだ。MacBook Airと比べると10万円ほど高価なMacBook Proではあるが、今後の円ドルレートの先行きに不安を抱えているなら、今回のMacBook Proへの乗り換えは良い選択となるだろう。 新色のiMacや、愛らしいサイズのMac miniと比べると一番新鮮味に欠けるM4チップ搭載のMacBook Proだが、それでいて一番堅実な選択肢もまたMacBook Proなのだ。
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