「狂気の沙汰としか思えない」マドリーとペレス会長の大誤算。ベルナベウでのコンサート実施で収益増を見込んでいたが…周辺住民の猛反発で白紙に【現地発コラム】
これだけの巨大な建物に防音設備を整えるのは可能なのか
クラブと市長の対応に痺れを切らした近隣住民は、グループを結成し、訴状を提出。第53マドリード地方裁判所のモニカ・アギーレ・デ・ラ・クエスタ所長が主張を認めた。罪状は環境犯罪だ。クラブの担当責任者が召喚されている。 その間に、マドリーは数字を見直さなければならない。売上予測1億2000万ユーロというのはもはや風船の中にあるようなものだが、減価償却費6000万ユーロはすでに計上されている。さらに、防音工事のための急な出費が発生する。その一方で、ペレスはレジェンズとシックス・ストリートに説明をする義務がある。 両社は3億6000万ユーロを融資する代わりに(バルセロナだけが“経済的テコ”を作動させたわけではない)、今後20年間スタジアムから発生する利益を30%受けることになっているが、この数字もまた今や風船の中にあるような状態だ。 そもそもこれだけの巨大な建物に防音設備を整えることなど果たして可能なのだろうか。私には夢物語に思える。しかしその奇跡を起こさない限り、現状を打開する方法はない。そんななか、市議会は、一体どのような経緯でコンサート開催の許可を安易に出したのかを説明しなければならない。 結局のところマドリーの利益を受けるのはクラブのソシオだけだ。そして近隣住民の中で、ソシオはごく少数にとどまるはずだ。にもかかわらず市議会は、強力で迷惑な隣人から市民を守る義務を果たさなかった。 近年批判することがタブー視され、アンタッチャブルな存在になっているペレスが、限界まで改修工事を押し進めてしまったのではないかと私は危惧している。 スタジアムの利用用途がサッカーにとどまる限り、クラブと近隣住民の関係は常に良好だった。マドリーがこの地区にもたらす名声が、そのことで派生するデメリットをはるかに凌駕していたからだ。しかし、サッカーをコンサートの二の次のアクティビティに格下げするような計画案は、狂気の沙汰としか思えない。 かくしてベルナベウはコンサートをしばらく開催することができなくなった。そして今、専門家が悲観的な見方をする中、突貫工事で騒音対策に取り掛かろうとしている。またまた工事が行われるわけだ。トラックが行き交い、近隣住民に迷惑をかけることになる。そしておそらくは何の結果も得られないだろう。 文●アルフレッド・レラーニョ(エル・パイス紙) 翻訳●下村正幸 ※『サッカーダイジェストWEB』では日本独占契約に基づいて『エル・パイス』紙のコラム・記事・インタビューを翻訳配信しています。
【関連記事】
- 「移籍したくなかった。なのに…」中井卓大が3部へのレンタルに本音。厳しくなったマドリー昇格にも言及「できればトップチームで――」
- 「彼がインスタでメッセージを送ってきて…」20歳MF中井卓大、“同い年のスーパースター”から連絡が来た過去を告白!「U-15の大会で対戦した後に」「クレイジーだよ」
- 「前線で孤立、決定力不足、守備をしない」一部のマドリーサポからエムバペへの不満が噴出【現地発コラム】
- 「崩しとかいらねぇじゃん」内田篤人が指摘した森保ジャパンの見過ごせない課題。欧州強豪との“明確な差”を主張「日本代表でも見たい」
- 「そんなん言っていいの?」久保建英、ソシエダの不調でこぼした“本音”に元日本代表も驚き「本人ももっと上のチームに行きたいとか…」